溶蝶蒸発法を用いて、様々な金属ナノ線路を作製した。様々な大きさ(5~30nm)の金および銀ナノ粒子溶液を用意し、DNAと静電的に結合させるために表面をアミンチオールで修飾を行った。作成された金ナノ線路は暗視野光学顕微鏡を用いることで、光学イメージングが可能であった。DNAに結合する金ナノ粒子濃度を増加するに従い、線路に沿って緑色の不連続な散乱光は赤色の連続したラインとして観察されるようになった。作成された金ナノ粒子線路は最大で1mm以上に達した。このことは金ナノ粒子同士の凝集による強いプラズモンカップリングが線路に沿って発生すことを示した。この結果から、強いプラズモンカップリングを示す、一次元金属ナノ線路の作成が可能であることが示された。 作製した金ナノ粒子線路を光照射により発生する散乱光のスペクトルおよびその強度を顕微分光法により測定したところ、強い異方性が観測された。金ナノ粒子線路の軸方向に対する散乱光強度依存性はコサインカーブを描いた。特に線路軸に対して平行に光照射した際、そのスペクトルの強度はより大きく(コントラスト比、3から5程度)、ピーク位置もより長波長側に観測された。この事は結合された金ナノ粒子の配列が線路の軸方向に沿って優先的であることを示す。またSEM観察により、結合された金ナノ粒子は線路軸方法に一次元的に配列されていることが確認された。散乱スペクトルの実験値と理論値の比較から、線路の軸方向における金ナノ粒子のカップリングはナノ粒子6個以上そして短軸方向には3個程度であることが見積もられ、SEMイメージとも良い一致を示した。銀ナノ粒子においても同様に金属ナノ線路が作成できることが分かった。しかしながら、金ナノ粒子に比べ、線路上において観察される散乱光は断続的であり、さまざまな色調の散乱光が観察された。線路に沿って結合した銀ナノ粒子の密度は小さく、銀ナノ粒子同士のプラズモンカップリングもまた均一でないことが示された。DNAとの結合力を強めた銀ナノ粒子の作成を検討する必要がある。 金ナノ粒子を用いた金ナノ粒子線路は線路全体に沿って強いプラズモンカップリング観察されたため、次年度はこれを用いた光伝播を検証する。
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