一般に脂溶性であるフッ素基を含有する医薬品は多種多様合成され、多くの患者に服用され、生体内では新陳代謝を受けずそのまま排泄される。量的には自然界に微量存在していることが報告されているが、食物連鎖を通じて、微生物や小動物に影響し、河川などの自然生態系に濃縮、累積されるので、水質環境の保全のために、解決しなければならない。この様に生態系で生分解されず、蓄積されるフッ素含有医薬品(例えばフルオキセチンFLX)に強い酸化剤を添加したハイブリッド型の光触媒による完全無機化を行い、安全な分解処理を試みた。C-F結合の切断(光還元)は非常に困難で、従来報告されている、不均一系光触媒(二酸化チタン、酸化亜鉛など)や均一系光触媒(ポリタングスト燐酸塩)使用のみの分解では、酸化分解率が低く、フッ素イオンへ至らない。不均一系光触媒の方が分解生成物と触媒粒子の回収や分離が容易である。紫外線照射および酸素存在下、オゾンや過酸化水素、過塩素酸を併用した高度酸化プロセスでの最適分解反応条件の検討を行った。分解反応のpH依存性に関し、基質のFLXの触媒表面への吸着が分解速度に大きく影響した。アルカリ性pHが11で、60分の紫外線照射で、50%無機化であったが、過酸化水素の添加では70%以上、オゾン存在下では、10分の照射下、97%無機化に至った。uv+TiO2+O3+H2O2のハイブリッド法では約30分後、TOC測定によると無機化速度が著しく促進された。このハイブリッド方法は下水環境中に廃棄流失した、厄介な医薬品の分解処理に有効であった。フッ素基の部分は完全には酸化分解されず、光分解中間体が生成する場合がある。これらの生成物は反応性に高く、生体内で、DNAへの損傷が予測される。サルモレラ菌によるAmesテストを調べたが変異原性は認められなかった。
|