研究課題/領域番号 |
22550147
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
野口 恵一 東京農工大学, 学術研究支援総合センター, 准教授 (00251588)
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キーワード | 環境 / 硫化カルボニル / 金属酵素 / タンパク質 / 触媒機構 / 基質認識 / X線回析 / 結晶構造 |
研究概要 |
チオシアネート(SCN-)は工業廃水に多量に含まれる汚染物質であり、その分解系の研究は環境保全のために重要な課題の一つである。多くの植物はSCN-基を含む化合物を有しており、植物が枯死した後のSCN-の分解には土壌細菌が関わっている。従って、土壌細菌のもつSCN-分解系を利用した環境浄化が注目を集めているが、分解を行う酵素系の詳細はあまり明らかにされていない。本研究では、SCN-を硫酸イオン(SO_4^<2->)にまで分解する代謝系を有している土壌細菌Thiobacillus thioparusTHI115由来チオシアネート加水分解酵素(SCNase)、および、硫化カルボニル分解酵素(COSase)について、SCN_分解系酵素の変異体、基質複合体、モデル錯体の結晶構造解析を行い、これら酵素の触媒機構を原子レベルで明らかにすることを目的として研究を進めている。 平成22年度に結晶化、および、分解能1.35AのX線回折データの収集に成功したCOSaseと基質類似化合物であるSCN-の複合体について、平成23年度は結晶構造の精密化を進め、最終的にR=0.177,R(free)=0.212の構造モデルを得た。最終構造モデルは、登録番号(PDB ID)3VQJとしてProtein Data Bankへ登録した。複合体構造の解析結果から、COSaseはβ炭酸脱水酵素と類似した触媒機構を有することが予想されたが、触媒ポケット中での基質認識に関与するアミノ酸残基には違いがあることが判った。そこで、基質の認識に関与すると予想される11e33、Ala68、11e82、Leu87を、それぞれ、Ala、Gly、Tyr、Glyに置換した変異体、反応サイクルに関与すると予想されるMet45とHis63を、それぞれ、AlaとPheに置換した変異体を作製し、COS分解活性、および、CA活性の評価を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究開始当初から予定していたCOSaseと基質類似化合物であるSCN一の複合体の結晶解析は終了し、その結果をもとに、触媒機構や基質認識に関して具体的な検討を始めている。平成23年度から開始した部位特異的変異体を用いた活性評価、結晶解析を今年度中に行うことにより、当初の研究目的は達成できると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
前年度までに行った結晶構造解析により、COSaseの全体構造は6本のα-ヘリックスと5本のβ-ストランドから形成されていることを明らかにしたが、この結果から、5番目のα-ヘリックスが活性部位への基質の進入経路を狭めていることがわかった。これまでに結晶構造解析されたβ-CAにはこのような特徴は見られなかったことから、基質経路がに質選択に大きな役割を果たしていると考えられた。そこで今年度は、COSaseの5番目のヘリックスを削除した変異体も作製し、その立体構造と触媒活性についても検討を行う予定である。
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