研究課題
チオシアネート(SCN-)は工業廃水に多量に含まれる汚染物質であり、その分解系の研究は環境保全のために重要な課題の一つである。多くの植物はSCN-基を含む化合物を有しており、植物が枯死した後のSCN-の分解には土壌細菌が関わっている。従って、土壌細菌のもつSCN-分解系を利用した環境浄化が注目を集めているが、分解を行う酵素系の詳細は明らかにされていない。本研究では、SCN-を硫酸イオン(SO42-)にまで分解する代謝系を有している土壌細菌Thiobacillus thioparus THI115由来チオシアネート加水分解酵素 (SCNase)、および、硫化カルボニル分解酵素(COSase)について、SCN-分解系酵素の変異体、基質複合体の結晶構造解析を行い、これら酵素の触媒機構を原子レベルで明らかにすることを目的として研究を行った。前年度までに終了した野生型COSase、および、COSaseと基質類似化合物であるSCN-の複合体の構造解析の結果より、COSaseの全体構造はβ炭酸脱水酵素に非常に類似しているが、6本のα-ヘリックスのうちN末端から5番目のα-ヘリックスが活性部位への基質の進入経路を狭めている点がこれまでに結晶構造解析されたβ-CAとは立体構造的には大きく異なる点であることを明らかにした。したがって、COSaseの基質選択には基質経路が大きな役割を果たしていると考えられた。さらに、触媒ポケット中での基質認識に関わるアミノ酸残基としてIle33、Met45、His63、Ala68、Ile82、Leu87などが予想されたが、最近結晶構造が報告された二硫化炭素(CS2)やCOS分解活性を有するAcidianus sp. strain A1-3 由来二硫化炭素加水分解酵素の立体構造との比較から、Ile33が最も関与する可能性が高いことが示差された。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2013 その他
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (10件)
J. Am. Chem. Soc.
巻: 135 ページ: 3818-3825
10.1021/ja307735e