研究課題
23年度の研究では、前年度の研究で開発したアズリンの部位特異的逐次修飾の手法を発展させ、電極への固定化部位とセンサーキナーゼとの結合部位を確実にアズリン上の決めた部位に導入する方法を確立した。その後、センサーキナーゼの外部刺激応答に同期する「アズリン-センサーキナーゼの動的結合/解離」を実現するため、センサーキナーゼの疑似基質であるアデノシン三リン酸類縁体に様々なリンカー分子を設計、合成、結合させ、アズリンへの修飾を行った。研究開始当初、リンカー分子の構造に関わらず、キナーゼ結合部位は、キナーゼとの結合/解離の動的挙動をある程度示すものと期待していた。しかし、様々なアイデアに基づき設計したいずれのリンカー分子を用いても、アデノシン三リン酸類縁体を有するキナーゼ結合部位は、キナーゼに対する結合性を示さなかった。このことは、「アデノシン三リン酸+リンカー分子」でセンサーキナーゼの結合部位を構成することそのものに問題があることを示唆する結果である。アデノシン三リン酸類縁体に対するリンカー分子の接合は、アデノシン三リン酸とセンサーキナーゼの結晶構造に基づき、アデノシン-キナーゼ結合にもっとも影響の出ない箇所を選択していた。しかし、両者の結合は、多点認識に基づく精密なものであるため、アデノシン三リン類縁体とリンカー分子との接合そのものがこの多点認識に影響を与え、結合能を喪失させた可能性がある。そこで24年度研究ではこの考察に基づき、もともとアデノシン三リン酸とは全く異なる構造を有する(しかし、キナーゼには結合能を有する)分子を利用し、これにリンカー分子を接合したキナーゼ結合部位を開発する予定である。本来の基質とは異なる構造を有する分子では、キナーゼとの結合認識が緩いことが予想され、結合能に対するリンカー分子接合の影響が比較的小さいと期待できる。
3: やや遅れている
23年度研究からの課題である、キナーゼ結合部位(アデノシン三リン酸疑似基質)へのキナーゼの安定な結合が未だ完全に実現できておらず、センサーキナーゼの外部刺激応答に同期したアズリン-センサーキナーゼ結/解離の仕組みができ上がっておらず、この部分が計画全体の遅延につながっている。アズリンの電極への固定化法、センサーキナーゼ結合部位の修飾法については、確立している。
センサーキナーゼ結合部位の構造については、研究計画段階からこれまでアデノシン三リン酸+リンカー分子で構成することを前提とし、リンカー分子の構造によって結合の最適化が図れると考えていた。しかし23年度、様々なリンカー分子構造を設計・合成したにも関わらず、未だセンサーキナーゼの動的な結合/解離が可能な結合部位を調製できていない。そこで、24年度は従来のセンサーキナーゼ結合部位の設計指針を変更し、構造はアデノシン三リン酸とは全く異なるものの、キナーゼに結合することが知られている分子(オリゴペプチドも含む)を利用したものを設計、合成、アズリンへの修飾を行う。新しく調製したセンサーキナーゼ結合部位修飾アズリンとセンサーキナーゼとの動的な結合/解離の現象が確認できれば、系の電極化を図り、当初研究目的の実現を目指す。
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