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2011 年度 実績報告書

銅イオン輸送タンパク質として発見したキャディによるチロシナーゼ活性化の分子機構

研究課題

研究課題/領域番号 22550153
研究機関広島大学

研究代表者

杉山 政則  広島大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 教授 (30106801)

キーワードチロシナーゼ / 銅イオン / X線結晶構造解析
研究概要

チロシナーゼは,活性中心に2つの銅を有する酵素であり,メラニン色素合成の律速段階であるL-チロシンからL-ドーパキノンへの変換を触媒する。放線菌チロシナーゼは,キャディと名付けたタンパク質との複合体の状態で合成される。キャディはチロシナーゼの活性化に深く関わっており,キャディによってチロシナーゼ活性中心へ銅が輸送された後,キャディは複合体から解離し凝集する。さらに,キャディ分子内には2つの銅結合部位が見いだされている。前年度までの研究成果として,キャディの銅結合部位に変異を導入すると,チロシナーゼの活性化に必要な銅イオンの濃度が上昇する,もしくは,活性化する能力を完全に失うことが明らかとなった。さらに,チロシナーゼの活性中心付近に形成されている水素結合ネットワークを破壊するように変異を導入した場合でも,活性化に必要な銅イオンの濃度が上昇した。
本年度は,チロシナーゼとキャディ変異体の複合体のX線結晶構造解析を実施した。その結果,チロシナーゼが全く活性化されない変異型複合体では,チロシナーゼの活性中心に銅イオンがほとんど取り込まれなかった。さらに,活性化のための銅イオン要求量が増加した変異型複合体では,新しい銅結合部位が見いだされた。この銅結合部位は,キャディ内部に存在する銅結合部位と,チロシナーゼの活性中心を結ぶ中間点に位置している。この結果から,キャディの分子表面から,チロシナーゼの活性中心へと銅を輸送する経路が特定できた。チロシナーゼの活性中心が形成されるとき,ひとつめの銅イオンが取り込まれた後,静電気的反発に逆らい2つめの銅イオンを導入する段階が,律速段階であると考えられるが,キャディによる銅輸送は,律速段階を効率よく進行させるために必要であると理解できる。本年度までに得られた成果は,Journal of Biological Chemistry 286号34巻にて発表した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

当初,3年間でキャディによるチロシナーゼへの銅輸送機構を解明しようと計画していた。しかしながら,本年度までに銅輸送機構を解明することができたため,当初の計画以上に進展しているといえる。

今後の研究の推進方策

キャディによるチロシナーゼへの銅輸送機構を解明することはできたが,銅輸送完了後,いかにしてキャディがチロシナーゼから解離するのかを説明できていない。チロシナーゼは,タンパク質の分子表面にあるチロシン残基を反応性の高いドーパキノンに変換することにより,タンパク質の凝集を促進するとの報告がある。このため,チロシナーゼの銅取り込みが完了した後キャディ中のチロシン残基がドーパキノンに変換されるとの仮説が立てられる。ただし,チロシン残基をドーパキノンに変換するためには,チロシナーゼに結合した2価の銅が還元され,さらに,分子状酸素と結びつくことにより,オキシ型チロシナーゼが形成される必要がある。今後は,オキシ型チロシナーゼを形成させた後の変化を,ラマンスペクトルやX線結晶構造解析により,解明していきたい。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2011

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] メラニン生成酵素の三次元構造を美白化粧品開発に活かす2011

    • 著者名/発表者名
      的場 康幸, 杉山 政則
    • 雑誌名

      COSME TECH JAPAN

      巻: 1 ページ: 717-722

  • [雑誌論文] A molecular mechanism for copper transportation to tyrosinase that is assisted by a metallochaperone, caddie protein2011

    • 著者名/発表者名
      Matoba Y, Bando N, Oda K, Noda M, Higashikawa F, Kumagai T, Sugiyama M
    • 雑誌名

      Journal of Biological Chemistry

      巻: 286 ページ: 30219-30231

    • 査読あり
  • [学会発表] キャディーによるチロシナーゼへの銅輸送機構2011

    • 著者名/発表者名
      的場康幸, ら
    • 学会等名
      第5回バイオ関連化学シンポジウム
    • 発表場所
      つくば国際会議場
    • 年月日
      2011-09-13

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公開日: 2013-06-26  

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