研究概要 |
申請者が、環状ペプチド抗生物質合成のために開発したバイオミメティックコンビナトリアルペプチド合成法(Tetrahedron Lett., 47, 8475-8478(2006))を用いて、低溶血活性と高抗菌活性を合わせ持つ新規両親媒性環状ペプチドのデザインと合成を行う事を目的として研究を行った。 今年度は、1. 両親媒性環状ペプチド グラミシジン S,cyclo(-Val-Orn-Leu-D-Phe-Pro-)_2,の関連環状ウンデカペプチド,cyclo(-Val-Orn-Leu-X-D-Phe-Pro-Val-Orn-Leu-D-Phe-Pro-)(X=Lys, Orn, Dab, Arg) 2, グラシジン,cyclo(-Val-Orn-Leu-D-Phe-Pro-D-Tyr-)_2,のPro残基の代わりにX=Lys, Orn, Dab, Argを導入したグラチシン類似体の合成を行った。そして、これらの類似体が低溶血活性と高抗菌活性を合わせ持つ新規両親媒性環状ペプチドであることを発見し報告した。すなわち、今回の研究で、塩基性アミノ基側鎖をもつアミノ酸残基(Lys Orn, Dab, Arg)を両親媒性環状ペプチドに導入することが、今回示した様な今までにない特異的な活性発現を誘導するのに重要な役割をしていることを発見した。 今後の研究を通じて、高い抗菌活性と低い溶血活性をあわせもつ治療学的に有用なインデックスを増やすとともにその構造-活性相関を明らかにする事によって、現在、健康に対する重大な脅威を与えている耐性菌に対する今後の新規ペプチド抗生物質のデザインと合成分野の発展に大きな寄与ができるものと確信している。
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