研究概要 |
蛋白質生合成開始因子4E(eIF4E)は、mRNAのキャップ構造を選択特異的に認識し他の因子と共にmRNAをリボゾームへ結合させて蛋白質合成を開始させるという重要な働きを担っている。このeIF4Eの機能発現は、内因性eIF4E結合蛋白質(4EBP)により制御されているが、4EBPには3種サブタイプが存在するなどその制御機構は非常に複雑である。サブタイプの1つである4EBP2の末端欠損変異体を用いたこれまでの研究より、eIF4Eと4EBPとの結合には、既に明らかにされているY54-L60領域と共に、4EBP2のH74-E89領域が極めて重要であることを示した。本年度の研究では他のサブタイプである、4EBP1と4EBP3においてもN末端欠損体及びC末端欠損体を作成し、それぞれのeIF4Eへの相互作用の差異を、表面プラズモン共鳴(SPR)により速度論的に検討した。 4EBPlのC末端側より31,35,40,47残基を欠損させた変異体の各遺伝子を作成し、GST融合タンパク質として大腸菌に組み込み発現させた。各欠損変異体は良好な発現が得られたためアフィニティクロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィーを用いて単離精製し、高純度の各欠損変異体を得ることができた。こうして調製した試料を用いて、表面プラズモン共鳴(SPR)により、eIF4Eに対する4EBPの各欠損体の相互作用の差異について検討を行った結果、4EBP1のCd31BP1およびCd35BP1各欠損体は、完全長4EBP1との比較で優位な差がないのに対し、Cd40BP1およびCd47BP1欠損体においては、eIF4Eとの結合力が明らかに低下した。これらの結果は、4EBP2と同様に4EBP1においても、Y54-L60領域よりC末端側に存在するD74-S83領域が、eIF4Eとの結合に極めて重要であることを示唆する結果となった。
|