研究課題/領域番号 |
22550161
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
後藤 博正 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (40292528)
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キーワード | らせん誘起力 / キラル / 共役系高分子 / 液晶 / 光異性 / 二色性 / 結晶構造 / 固体結晶電解液 |
研究概要 |
まず、らせん誘起力の強い新規キラルインデューサーを合成するため同一分子内に複数の不斉中心をもつ分子を作成した。これを用いてキラル液晶電解液を作成し、共役系高分子の電解合成を行った。当該年度ではフラン誘導体モノマーを合成した。この合成にはMigita-Kosugi-Stilleカップリングを用いた。分子構造はNMR,IRで確認した。フランの系は液晶中で電解重合を行うと、大きな凹凸構造が生じ、その結果、光回折機能が現れることがわかった。この表面構造を走査型電子顕微鏡で観察するとともに、紫外可視吸収スペクトル、円偏光二色性、光学回転(旋光分散)を評価した。さらにキラルな液晶のみでなく、層状構造をもつスメクチックA相を示す液晶を電解液とし、電解重合を行い、回折能をもつポリマーを得た。この表面観察を行うとともに、光吸収の二色性を評価した。さらに光異性をもつ分子を電解液に溶解し、紫外光、可視光の繰り返し照射により液晶性を変化させる液晶電解液を作成した。この光変調可能な液晶電解液を用いて電解不斉重合を行い、遠隔よりキラリティーを変調することのできる「遠隔指令型電解不斉重合」を開発した。また液晶の構造を転写したポリマーの合成を行うことに加え、結晶構造をもつポリマーの合成を行う方法を見出した。これは、「固体結晶電解液」を用いることにより、結晶中で電解重合を行う方法で、得られたポリマーは球晶の形態をもつことが偏光顕微鏡写真から確認できた。この分光学的測定、反射光の色彩など評価した。以上により得られたポリマーの干渉色の評価と電気化学的酸化還元に伴う干渉色の変化を評価した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
複数の不斉中心をもつキラル分子を合成し、これが大きならせん誘起力をもつことがわかった。これを用いて電解不斉重合を行い、キラルなポリマーを得た。この酸化還元特性は良好で、繰り返し可能な円偏光二色性の電気化学的酸化還元による制御が可能であった。さらに遠隔指令型電解不斉重合法や固体結晶電解液を用いた電解重合法による球晶ポリマーの合成などに成功した。これより現状では、研究目的の達成に向かい当初の計画以上に研究開発は進んでいると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
原子間力顕微鏡(AFM)によりピッチ間隔などのサンプルの表面状態を評価する。重合条件を変え、ピッチ(らせんのねじれの大きさに対応。指紋状構造の縞の幅はらせんの半周期分に相当)の変化と重合の際に用いる液晶の、らせんの大きさとを対比させる。また、酸化還元に伴い、ピッチが変化するかを走査型電子顕微鏡およびAFMにより評価する。これにより重合条件、特に液晶のらせんの状態と得られるポリマーの相関を調べ考察する。
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