平成22年度はまず、電気化学堆積法による酸化亜鉛(ZnO)薄膜の連続膜化に取り組んだ。欠陥評価のためには連続膜が望ましいが、電気化学堆積法による薄膜は粒が独立して成長しやすく連続膜にはなりにくい。本研究では、この非連続膜成長の原因が成長のごく初期段階における水酸化亜鉛(Zn(OH)_2)のナノ結晶の生成と、それを核としたZnOの結晶成長であることを明らかにした。さらにこの知見を元に電気化学成長のプロセスを見直すことでZn(OH)_2の抑制を回避することに成功し、再現性良く連続膜を作製することを可能にした。Cu_2Oの連続膜化については現在検討中である。欠陥の評価においては、電気化学製膜では基板が導電性であるためにホール測定が出来ないため、キャリア輸送特性からの検討が困難である。そこで光学的評価手法の一つである光励起発光(PL)法による評価システムの構築を行った。評価装置は、23年度以降に予定している電気化学成長その場観察を考慮した構造とした。ZnO連続膜からのPLスペクトルにはバンド端発光の他に中心波長600nm付近のブロードな発光が確認された。これは水素が関与した欠陥に起因するものと考えている。またピーク分離の結果、当初は抑制されていることを期待していた酸素欠損に起因すると考えられる550nm近傍を中心とする発光も認められた。このような非化学量論的欠陥の生成量が、成長環境(電解液)のpHによって変化する可能性があると考え、現在その検証実験を進めている。また、イオン濃度と電界電流のバランスにより電子供給、もしくはイオン供給が律速する成長とした場合の欠陥形成への影響についても検証を進めている。低温測定については測定を開始した段階である。
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