研究課題/領域番号 |
22550164
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
芦田 淳 大阪府立大学, 工学研究科, 准教授 (60231908)
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キーワード | 電気化学成長 / 酸化亜鉛 / 酸化銅 / 太陽電池 / 酸化物半導体 / 非化学量論性欠陥 / 光励起発光 / 非化学量論性欠陥 |
研究概要 |
平成23年度は主に電気化学堆積法による酸化銅(Cu_2O)の薄膜成長に取り組んだ。電解液は硫酸銅と乳酸の混合水溶液とした。NaOHによりpH調整を行った際に、pHが高い場合にCu(OH)_2の沈殿が生じた。これに対し、銅イオンに対する錯化剤の量を最適化することで沈殿を回避した。電位-pH図で示される酸化銅の析出領域は電位の許容範囲が小さい。そのため製膜中に電位が変動する定電流法ではなく定電位法を採用した。成長電極は銅板とした。銅は無電解めっきによる製膜も可能であり、安価な太陽電池の基板としての可能性を持つ。これとは別に異相確認用としてITO基板上にも成長を行った。XRD測定からは、予想されたCuOの他にCuもわずかながら確認された。(0001)配向しやすいZnOとの接合には、酸化銅は(111)配向していることが望ましい。電解液のpHが11-12で(111)優先配向しやすいとの先行研究例があり、本研究ではpHを10-13とした。また電解電位を-0.5~-0.2V(vs.Ag/AgCl)の範囲で変化させた。その結果、電位が-0.3~-0.2VではpHにより配向か大きく変化したが、-0.5~-0.4Vでは優先配向の明確なpH依存性は見られなかった。一方電解電位に対しては、pHが11以下では<110>配向か支配的であった。これに対しpHが12以上の場合には電位が高い(貴)なほど<111>優先配向か強く、pH12.5、-0.2Vでは<111>単一配向に近いCu_2O薄膜が得られた。また、得られたCu_2O薄膜の上部に極薄のAu電極を設け、太陽電池応用に重要な面直方向の電気伝導特性を評価した。その結果、面直報告の抵抗率がkΩオーダーと大きいことはわかり、この低減が今後の課題の一つと考えられる。また電流-電圧特性はCu_2O/Cu界面のショットキー特性を反映した特性を示した。さらにCu_2Oのバンドギャップ以上のエネルギーの単色光照射下で同様にI-V測定を行い、光励起キャリアによると考えられる電流の大幅な増加を確認した。また本年度はDLTSならびにフォトルミネッセンス法による評価システムを構築し、一部の試料に関して欠陥の評価を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
評価の前提となる試料作製は,ZnO, Cu_2Oともに順調に進んでいる。得られた試料の欠陥評価の足がかりとしてI-V特性と大まかな抵抗率の算出を行い、配向との相関を評価中。PLのシステムは構築がやや遅れていたが、23年度末でほぼ完了した。
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今後の研究の推進方策 |
電気化学成長ZnOならびにCu_2O薄膜の欠陥評価を従来の光学的評価に加え電気的特性からも評価する。また、ZnOについては太陽電池のn層のみならずi層として使用できる高抵抗薄膜の作製をめざす。Cu_2Oは異相の排除と電気抵抗の低減を試みる。試料作製は順調に進んでいるとは言えその数はまだまだ十分ではなく、今後は欠陥評価の結果を製膜条件にフィードバックさせて再結合中心等になり得る欠陥の低減を図る。また太陽電池用窓層ならびに吸収層として求められる電気伝導特性実現のために、欠陥の低減のみならず意図的な導入の方法をも探索する。
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