研究課題/領域番号 |
22550165
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
功刀 義人 東海大学, 工学部, 教授 (90243518)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 有機半導体 / 有機デバイス / 半導体物性 |
研究概要 |
本年度は三年目であり、材料開発特にデバイス化を念頭に置いた基礎骨格の創出を重点的に行った。 (1)新規有機トランジスタ材料の開発 有機トランジスタ材料は一般に低分子系材料と高分子系材料に分類され、さらにプロセの分類で、塗布・印刷系材料、蒸着系材料、単結晶系材料に分類される。材料開発で最も重要なことは基本骨格の創出であり、最も時間を要し難しいプロセスであるが、優秀な基本骨格を見出すことにより、低分子材料、高分子系材料、塗布・印刷系材料、蒸着系材料、単結晶系材料など様々な新規材料への展開が可能となる。クリセン系の化合物群を多数開発することに成功した他、含ヘテロ縮環形化合物のラインナップも充実したものになった。高機能デバイスへ向けた分子設計の指針が明確になってきた。 (2)デバイス化・評価 有機半導体の性能評価は極めて複雑で、薄膜トランジスタを作製した場合、その膜を構成している有機分子の電子状態と共に、膜のモロフォロジーが重要なファクターとなっている。特に有機―無機ハイブリッド型の絶縁膜は素子性能の向上に絶大な効果を発揮することを見出した。また、空気中で安定に取り扱いが可能な新たな単分子系表面処理剤の開発にも成功した。新規に合成した化合物群については、分子軌道法計算を行いエネルギーレベル精査を行うと共に、薄膜でのX線回折、電気化学計測、AFM観察を行い、分子構造、膜の作製条件の変化に伴い、膜の電子状態、結晶構造、微結晶の会合状態、表面状態などがどのように変化するかを観測した。 次年度は、薄膜単結晶デバイス用の物質開発と素子化に着手する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題では高性能かつユニークな有機トランジスタの開発を実現するために、「新規有機トランジスタ材料の開発」と「素子開発」の両面ならアプローチを行うことを目的としている。 「有機トランジスタ材料の開発」では、標的分子として「縮環系有機半導体化合物」「単結晶用デバイス材料」を柱に新規有機トランジスタ材料の創出を目指しているが、既に本研究課題の前半で目標としている、基本骨格の創出に数種類成功している。また、基本骨格の修飾により、広範囲の有機トランジスタ材料の創出に成功しており材料開発についておおむね順調に進展していると自己評価している。 また、「素子開発」では、上記新規創出したトランジスタ材料の薄膜トランジスタ素子化、塗布型トランジスタ素子化、単結晶トランジスタ素子化などに成功し、移動度1cm2/Vsを超える素子(トランジスタ材料)の開発に複数成功している。また、無機有機ハイブリッド絶縁膜の開発や空気中で安定な絶縁膜の表面処理剤の開発にお成功しており、素子快活の面でも本研究はおおむね順調に進展していると自己評価している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題では高性能のトランジスタ材料の創出を達成するために、固体状態での分子間の電子雲オーバーラップ多い縮環系有機半導体に焦点を当てて開発を行う。 具体的には、含ヘテロ縮環系π共役化合物やジグザグ構造に縮環させたπ共役化合物などの開発、特に基本骨格の創出に力を入れて開発を推進する。また、昨年までの研究で「V字型縮環系コア」が有望な基本骨格であることを見出している。本年度は基本骨格の拡張合成を精力的に行い、半導体性の制御や溶解性の付与を施した分子をデザインし、新たなターゲット物質群として開発に取り組む。 また、デバイス作製では「空気中で安定な」単分子表面処理剤の開発でも成果が上がっており、引き続き、空気中で安定な単分子表面処理剤の開発と評価を行う。また、本年度は新たに薄膜単結晶の作製とその有機トランジスタへの応用へも取り組む。単結晶薄膜は非常に薄い単結晶薄膜のことで、トランジスタ素子基板に直接成長させる手法により作製を試みる。
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