研究課題
本年度は4年目であるために、昨年度までに開発した材料の成果を踏まえつつ、次の2つの項目を中心に研究開発を行った。(1)新規有機トランジスタ材料の開発有機トランジスタ材料の開発で最も重要なことは基本骨格の創出である。基本骨格の創出には多くの量力と時間を必要とするが、優秀な基本骨格を見出すことによりその後低分子材料、高分子系材料、塗布・印刷系材料、蒸着系材料、単結晶系材料など様々な新規材料への展開が可能となる。本年度は、環状π共役系化合物の開発を行い、物理的刺激によって、移動度が可逆的に変化するトランジスタ材料の開発に成功した。また、塗布・印刷系材料の開発にはこれまで、アルキル基を導入することが常法であったが、新たなアプローチとして、縮環系有機半導体コアの平面性をわざと崩した化合物群の開発を行った。4種類の一連の化合物の開発を行った結果、縮環系有機半導体コアのねじれ角が20°以上の物が創出でき、縮環系有機半導体コアの平面性を崩すことで、有機溶媒への可用性を付与することができることに成功した。(2)デバイス化・評価独自に開発した有機トランジスタ材料を用いて、有機薄膜トランジスタ(真空蒸着法・塗布法)、有機単結晶トランジスタを作製し、そのトランジスタ性能の評価を行った。また、独自に開発した新規材料について、分子軌道法(Gaussian09)を用いて分子構造やエネルギーレベルの計算を行うと共に、薄膜X線回折、AFM観察など行い、分子構造や薄膜の状態がどのようにトランジスタ性能に寄与しているかについて、調査した。
2: おおむね順調に進展している
本研究課題では、高性能かつユニークな有機トランジスタの開発を達成するために、「新規トランジスタ材料の開発」と「素子開発・評価」の両面からアプローチすることを目的としている。「有機トランジスタ材料の開発」においては、有機トランジスタ材料となりうる化合物の基本骨格の創出を念頭に開発を行い、既に数種類の基本骨格の開発に成功している。また、本年度は新たに縮環系有機半導体コアの平面性をわざと崩した化合物群の開発を行いコアの分子構造制御により溶解性の付与を達成できることを実証した。また、基本骨格の拡張・修飾を行うことで、豊富な有機トランジスタ材料の開発に成功しており、有機トランジスタ材料の開発においておおむね順調に進展していると自己評価している。また、「素子開発・評価」では、新規に開発した有機トランジスタ材料を用いて、有機薄膜トランジスタや有機単結晶トランジスタの作製し成功している。開発した有機トランジスタ素子は良好な駆動性能を示しキャリア移動度が2-3cm2/Vsとアモルファスシリコンの性能を遥かにしのぐ性能を示しており、素子開発の面でも本研究はおおむね順調に進展していると自己評価している。
次年度は、最終年度の研究であるために、これまでに開発したトランジスタ材料の成果を踏まえつつ研究の仕上げを行う。「新規有機トランジスタ材料の開発」では、これまで独自に開発してきた縮環系有機トランジスタ材料のコアの拡張と修飾を行い化合物群に幅を持たせると共に、新たな試みとして、非対称性を持つ有機トランジスタ材料の開発を行う。分子に非対称性を導入することにより、溶解性の付与が期待でき、プリンテッドエレクトロニクス材料をも視野に入れた新たな物質群の開発をターゲットとして材料開発に取り組む。「デバイス化と評価」においては、既に蓄積してきた技術である、有機半導体分子の配向性の制御、有機半導体材料と絶縁層との界面制御など有機トランジスタデバイスの機能向上のためのノウハウを駆使し、新たに開発する有機トランジスタ材料のデバイス化とその評価を行う。また、有機半導体薄膜のX線回折、AFM観察などの結果を踏まえ、分子構造、膜の作製条件の変化に伴い、膜の電子状態、結晶構造、微結晶の会合状態、表面状態などがどのように変化するかを観測し、分子構造とトランジスタ特性に関する知見の構築に関して一定の結論を打ち出したい。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 2件)
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