現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
得られた成果は実用的、学術的に興味あるものである。以下、それぞれの観点から成果の達成度・意義について記述する。 実用的な観点では、特に、固溶体化合物(Li2MnO3-LiCoO2)の電極特性、及び充放電に伴う構造変化を明らかにした点である。マンガンベース正極材は、大きな充放電容量、高い充放電電位、高い安全性、及び低コストなどの利点をもつ興味ある正極材である。しかし、実用的には、耐久性(サイクル特性)の向上が求められてきた。固溶体化合物(Li1.95Mn0.9Co0.15O3)を正極材として用いた場合、その放電容量は、電流密度30mAh/gで58サイクルにおいても約180mAh/gを示し、その減少率は2.4%程度であった。このような耐久性の向上には、構造が充放電に伴って比較的対称性の高いR-3mへと変化しているに起因すると考えられる。これらの結果は、実用的なマンガンベース正極材を設計する上で意義のあるものである。 一方、Li2MnO3 (C2/m)正極材で確認された充放電サイクルに伴うR-3mへの構造変化は、学術的に興味あるものである。研究代表者らは、この理由として、充電過程で化合物に導入された酸素欠損が関係していると考えた。酸素欠損によって、Mn3+に基づくヤン・テラー効果が抑制され、その結果、対称性の高いR-3m構造の生成が可能となったと考えられる。 成果は、論文(K. Ozawa, et al., J. Electrochem. Soc., 159, A300-A304, 2012)や招待講演(2nd International forum on green energy & electronic materials, and their applications, 28 -29 Mar. 2011, Wollongong, Australia)などで発表した。
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