研究課題
申請者は、最近、初めての着色していない白色シースルー色素増感型太陽電池を開発した。これは、独自に開発した近赤外領域のみの光を吸収する有機色素と半導体(酸化チタンや酸化亜鉛)の複合薄膜を光電極に用い、黄色に着色するヨウ素系レドックス対のかわりに無色透明有機レドックス対を使用することにより達成できた。この無色透明有機電解質は、本白色シースルー色素増感型太陽電池に必要不可欠であるが、使用時、ヨウ素系レドックス対を用いた場合に比べて、その光電変換効率の著しい低下をもたらす。本研究では、この原因を解明するとともに、その結果を基盤に、白色シースルー色素増感型太陽電池の性能を飛躍させる高性能な新規無色透明有機レドックス対の開発を目的とする。平成23年度は、母骨格となるヘテロ環の分子軌道計算を実施し、テトラゾール環が最も適していることが判明した。市販のメチル基を有するテトラゾールチオールを原料とするヨウ素フリーレドックス対は、ヨウ素系レドックス対に比べて、電解液への溶解性が低いため、性能の低下を引き起こしていた。そこで、市販のテトラゾールチオール類のメチル基を長鎖アルキル基もしくは分岐アルキル基を導入したテトラゾールチオール類を合成した。その結果、各種置換基を有するテトラゾールチオール類を原料にして調製したヨウ素フリーレドックス対は、融点が下がり、室温で液体になった。その結果、太陽電池セルの電解液中への有機電解質の濃度を増加させることに成功し、その太陽電池特性が向上する初期的な実験結果が見られた。今後、濃度の最適化を実施する予定である。
1: 当初の計画以上に進展している
新規なヨウ素フリー無色透明レドックス対の母骨格の最適化を分子軌道計算にて予測し、その合成を達成した。さらに、置換基を長鎖アルキル基に変換することにより電界液へのその低い溶解性の向上を達成した。
溶解性の向上を達成した置換テトラゾールチオールを用いてヨウ素フリー無色透明レドックス対を合成し、その濃度の最適化等による白色シースルーDSCの高性能化を図る。
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Organic Letters
巻: 14 ページ: 1246-1249
10.1021/o1300054a