我々は合成アントシアニン色素であるヒドロキシメトキシカルコン(HMC色素)を、細孔内修飾したメソポーラスシリカ(MPS)と複合化する研究をすすめている。HMC色素は、低環境負荷のみならず生体に対する高い安全性が期待できるフォトクロミック色素であるが、光や熱に対する安定性が低く、またドライ条件ではフォトクロミック性能が発現しない(水などの溶媒が必要)という欠点を有している。本研究では、MPS細孔中の固体酸性状態、細孔内表面の親水性・疎水性、細孔構造、金属ナノ粒子との共存などの因子を緻密に制御した上で色素と複合化することにより、上記欠点の克服を図る。 本年度は、担体であるMPSへのHMC色素の吸着量向上検討、得られた複合体のフォトクロミック特性検討、天然アントシアニン色素との比較検討をおこない、以下の結果を得た。1.MPSへのHMC色素吸着量はすでに検討をおこなったシリカゲルに比べて1.5倍となり、AlをMPS骨格に導入することでさらに向上した。2.HMC色素/MPS複合体はドライ条件において、UV-A照射による着色・遮光7日での消色・UV-A照射による再着色のフォトクロミックサイクルを示した。3.HMC色素とは異なり天然アントシアニン色素はMPSに吸着しにくいが、糖鎖を除去することで吸着が可能となった。またMPSとの複合化による光安定性の向上が確認された。 今後は、UV-A再照射による着色回復率向上と短時間での消色を目指した検討をおこなう。
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