研究概要 |
フラーレン類は、高分子樹脂中に混錬させることにより、耐熱性、低誘電率特性、高弾性率を改善できることが知られている。しかしながら、現状ではフラーレンそのものを機械的に粉砕しながら混錬するのが一般的であり、フラーレンの強い凝集性のために分散率が高くなく、機械的強度などに悪影響することなど少なくない。一方、フラーレン類に有機修飾を施したフラーレン誘導体はその溶解度も高く上記の問題を解決する有力な方法である。しかしながら、フラーレン誘導体の置換は、未反応、一置換、二置換、三置換、四置換、五置換、六置換等の混合物になることが多く、その選択的合成は極めて難しい。材料改質剤や多官能性モノマーとして使用を検討する場合、カラム分離による煩雑なプロセスを要し、コスト的にも応用が難しくなる。従って、現状では混合物で使用するためロットによる違いが生じたりするなど樹脂物性のコントロールも難しく選択的な合成プロセスを開発する必要がある。連結方法としては様々な方法が知られているが、これまで我々が最も取扱経験の多いトシルヒドラゾンを前駆体とするメタノフラーレンの合成から手掛けた。トシルヒドラゾンを前駆体とする合成法では[5,6]フレロイド体が生成するが、マイクロリアクターを用いた[5,6]フレロイド→[6,6]メタノフラーレン光異性化反応を開発し、温和な条件で効率良くメタノフラーレンに変換することができた。前年度までのマイクロリアクターを用いた選択的合成法と合わせて、トシルヒドラゾンから直接一官能性メタノフラーレンの合成ができたものと考えている。また、[5,6]フレロイドを生じない硫黄イリドを用いる合成においてはラグビーボール型分子であるC70の頭頂部に置換基を導入したα体を高い選択性で合成する手法を見出した。この手法を用いてC70分子の両極に置換基を導入した二官能性分子の合成が期待できる。
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