研究課題/領域番号 |
22550177
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
久下 謙一 千葉大学, 大学院・融合科学研究科, 教授 (10125924)
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キーワード | ナノ材料 / 金微粒子 / 銀塩写真感光材料 / アスコルビン酸 / 金膜写真 / ハロゲン化銀光分解 / 画像保存 / 温度依存性 |
研究概要 |
銀塩写真感光材料を用いた金微粒子形成法について、新たに見いだされたアスコルビン酸添加による金微粒子形成過程と、これまでの1価の金イオンの不均化反応による過程とを比較して、その形成機構について探った。まずこれまでに形成速度の違いと形成された金微粒子の粒子特性の違いを調べた。アスコルビン酸の存在下での形成速度の大幅な上昇と粒子のサイズ分布の広がりが見いだされ、その結果を報告した(Bulletin of the Chemical Society of Japan、84,947-952(2011) 2011年度は、温度依存性を中心に金微粒子の形成速度を調べ、それより反応機構の解析を進めた。1価の金イオンの不均化反応によるより、アスコルビン酸添加による還元反応の方が活性化エネルギーが小さく、これがアスコルビン酸添加時の金微粒子形成速度の上昇の理由の一つと考えられた。 温度依存性は単純ではなく、室温以上の高温側では、活性化エネルギーが大きく低下した。温度により異なる反応過程が存在することを示唆した。この系は写真乳剤膜中に分散したハロゲン化銀上での反応という不均な系である。このとき活性化エネルギーの小さな膜中の拡散過程が関与していることが推定される。 一方、このシステムでは露光により像が形成されるので、これまでも金膜写真などの画像形成プロセスに応用してきた。2011年度はこの方法で作製した金微粒子を用いて作られた、転写法による金膜写真の耐久性を調べた。これまでこするとはがれるなど、金膜写真の機械的強度が充分ではなかった。今回金微粒子を焼成して金膜写真とする際の焼成条件が金膜写真の強度に影響することが明らかとなり、800℃以上の高温での焼成で高い強度が得られた。これらの結果は、マイクロ写真記録を適用した文書の超長期保存システムの開発への重要な示唆を与えるものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アスコルビン酸添加での金微粒子の形成過程を調べ、反応過程の違いを解明し、反応速度の増大などの添加の利得が明らかにされ、論文として投稿した。反応機構の解明について、現在温度依存性の解析が進み、活性化エネルギーの値などある程度の結果が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
金微粒子形成過程の温度依存性を求めて、活性化エネルギーを算出する。活性化エネルギーから得られる情報量は多いので、反応過程の解析に有益である。 これまで測定条件が一定・適切でない部分があり、活性化エネルギーの違いがどのような条件で生じるのかの解析に難をきたした。これまでの経験を元に、測定条件を適切に定め、より精密な測定による活性化エネルギーを求め、反応機構の解析を進めていく。これより膜中の不均一系での、光照射により触媒が形成されるという特殊な系での金微粒子形成過程を解析する。
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