研究概要 |
酸化物半導体から構成される太陽電池は,次世代太陽電池として期待されているが,現在の最高変換効率は2%と極めて低い。これは,光吸収層として利用されている銅(I)酸化物(Cu_2O)のバンドギャップが2.1eVと大きいこと,品質・純度が低いことが要因となっている。本研究の目的は,理論変換効率が約28%となる1.3eVのバンドギャップを有するp型半導体銅(II)酸化物(CuO)とn型半導体ZnOから構成される新規な太陽電池を電気化学的ヘテロエピタキシャル成長により形成すると共に,高品質・高純度化することによって,変換効率10%の達成を目指すと共に,高効率化のための指針ならびにその学理を探求することである。平成22年度は、太陽電池光吸収層として機能する単配向・フォトレスポンスの優れたp型半導体CuO層を形成するための電気化学ヘテロエピタキシャル成長技術を確立することを目的とした。CuO形成用水溶液として,新規なアルカリ性アンモニアCu錯体水溶液を化学熱力学的に設計するとともに,基板を陽極として電解することによって,1,35eVのバンドギャップを有するCuO層を形成することに成功した。このCuO層がp型半導体であることを,ホール効果測定ならびに光電気化学測定により確認したが,透明導電性ガラス基板に形成したランダム配向CuO層は,良好な光照射による光電流値ならびに応答を示さなかった。単斜晶系構造を有するCuOの(002)面と良好な方位関係を有する(111)Au面上に電気化学的に成長させることによって,(002)CuO単配向層を形成することができ,ヘテロエピタキシャル成長が生じていることを極点図による方位関係ならびに電子顕微鏡観察から確認した。また,CuO層の配向を(002)に単配向させることによって,光電流値は25倍,光応答時間は1/4と,フォトアクテビティは著しく向上した。
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