研究概要 |
酸化物半導体から構成される太陽電池は,次世代太陽電池として期待されているが,現在の最高変換効率は3.8%と極めて低い.てれは,光吸収層として利用されている銅(I)酸化物Cu_2O)のバンドギャップが2..1eVと大きいこと,品質・純度が低いことが要因となっている.本研究の目的は,理論変換効率が約28%となる1.3eVのバンドギャップを有するp型半導体銅(II)酸化物(CuO)とn型半導体ZnOから構成される新規な太陽電池を電気化学的ヘテロエピタキシャル成長により形成すると共に,高品質・高純度化することによって,変換効率10%の達成を目指すと共に,高効率化のための指針ならびにその学理を探求することである.平成22年度には、化学熱力学的に設計したアルカリ性アンモニアCu錯体水溶液から1.35eVのバンドギャップを有するCuO層を形成することに成功すると共に,電気化学ヘテロエピタキシャル成長によりCuO層を(002)単配向化することによって,光照射時の光電流密度を約25倍,光応答時間を1/4と早めるなどフォトアクテビティを著しく向上させることに成功した.平成23年度は,この(002)-CuO層を太陽電池として応用するためのダイオード構造の最適化を行った.n型半導体層としてZnOを選択し,スパッタリング法ならびに電子ビーム蒸着装置を用いて製膜すると共に,ヘテロ界面状態を制御するためにSiOやCdSなどの化合物をバッファ層として導入した.スパッタリング法によりZnOを堆積させて形成したダイオードは整流性を示さなかったが,(002)-CuO層上にn-CdS層を形成したダイオードならびに(002)-CuO層上にSiO層を形成した後,電子ビーム蒸着装置でZnOを堆積させたダイオー、ドが良好な整流性を示すことを見いだすと共に,AM1.5G基準太陽光照射下で光電変換機能を示すことを確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成22年度の目的である,CuO層の電気化学ヘテロエピタキジャル成長による高品質化を実現し,著しいフォトアクテビティの向上を達成した.平成23年度の目的である,CuO層を用いたダイオードの形成については,Au/CuO/SiO/ZnO/Al構造ならびにAu/CuO/CdS/Al構造で実現すると共に,過去に累を見ない良好な整流性を達成し,光電変換機能を確認したことから上記区分と判断した.
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