研究概要 |
Ca-ida錯体から温和な条件下で低結晶性炭酸含有水酸アパタイト(CHA)と高結晶性CHAを合成し,PLGAとのコンポジット化を行い,3Dポーラススキャフォールドを作製した。In vitro試験として,PBS中でのコンポジットの分解挙動,およびSBF中でのCP析出速度を調べたところ,低結晶性CHA導入コンポジットは高結晶性CHA導入コンポジットよりも分解速度の抑制および早期のCP析出が認められたことから,In vivoでの試験が期待された。しかし,In vivo試験において,埋入したコンポジットがドリルホール部で保持できず,期待した結果ではなかった。この要因には,コンポジットの強度が影響していると考えられる。以前の研究の結果から,コンポジットの気孔率が重要であることが分かった。この知見は,今後のコンポジットの設計に大いに役立つと考えられる。さらに,Ca-Asp錯体からHAの合成を試みた。得られたHAは,結晶子サイズが13nmの低結晶性CHAであった。熱的特性や元素分析から,5CHAに対して物質量比で2Aspを含んでいることを確認した。この化合物のPBS中での溶解度は約0.2g/100mLで,一般的なHAよりもより溶解することを確認した。この化合物とPLGAをコンポジット化した。コンポジット中のCHA含有率は32%であった。PBS中でのコンポジットの分解挙動およびSBF中のCP析出速度は,Ca-ida錯体から合成した低結晶性CHA導入コンポジットとほぼ同じであったことから、コンポジットへの低結晶性アパタイト導入は,In vivoでも期待できる。これらIn vivo試験結果は,現在投稿準備中である。また,最終年度に比較対象とする水溶液スプレー法膜について,検討を進め,得られた試料のIn vitro試験に着手できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コンポジットのIn vivo試験において,当初予測したとおりの結果が得られなかった。この要因を調べ,対策を検討する時間を必要としたため,合成法に関する達成度がやや遅れた。結果的に,コンポジットの成分よりも,その強度に支配される知見が得られ,学術的な意義は失われていない。一方,スプレー法による比較試料の形成法をほぼ確立できるまでに進展させており(投稿中),全体としてはおおむね順調である。
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今後の研究の推進方策 |
コンポジットの気孔率により,強度が変化し,In vivo試験で影響があることを確認した。そこで,異なる気孔率のコンポジットを作製し,その強度測定とIn vitroでの相関性の評価を行う。スプレー法による比較試料との性能を継続的に検討し,まとめる。
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