研究概要 |
最近、酸化チタンよりも小さなバンドギャップを持つ複合金属酸化物として、CaO-Bi_2O_3系複合酸化物が報告されている。この複合酸化物は、従来、酸化物と炭酸塩を出発原料とする固相反応法で調製されているため、得られた粉体は形や大きさ,化学組成が不均一であるだけでなく、触媒材料として重要な比表面積が極めて小さいという致命的な問題点を持つ。本研究では、高活性な可視光応答型光触媒を得るために、均一な組成と高い比表面積を持つ試料の調製方法を確立するとともに、詳細なキャラクタリゼーションと電子構造解析の実施により、光触媒能の発現機構の解明と可視光波長域において動作可能な光触媒の創製を行うことを目的とする。 CaO-Bi_2O_3系酸化物は、固相反応法,クエン酸錯体法,酢酸塩法により調製した。粉末X線回折測定による結晶構造の同定より、酢酸塩法では単一の結晶相は得られなかったが、クエン酸錯体法で調製した試料は、従来法の固相反応法と比較して、約100℃低い焼成温度で、単一のCa_4Bi_6O_<13>結晶相が得られることがわかった。比表面積測定の結果より、600℃で焼成したクエン酸錯体法の試料は、従来法の固相反応法より得られた試料の表面積(0.78m^2/g)よりも大きく、約3倍の2.24m^2/gと見積もられた。拡散反射型分光吸光度測定の結果からCa_4Bi_6O_<13>のバンド間遷移は直接遷移型であり、そのバンドギャップエネルギーは、2.82eVと見積もられた。可視光照射下において、Ca_4Bi_6O_<13>のメチレンブルー分解法による触媒活性試験を実施したところ、クエン酸錯体法で調製した試料は、固相反応により調製した試料よりも高活性であることがわかった。キャラクタリゼーション,メチレンブルー分解法による光触媒特性の結果より、クエン酸錯体法による調製が最も有効であることがわかった。
|