研究概要 |
最近、酸化チタンよりも小さなバンドギャップを持つCaO-Bi_2O_3系複合酸化物が、可視光応答型光触媒として注目されている。この複合酸化物粉体は、従来、炭酸塩や酸化物を出発原料とする固相反応により調製されているため、得られた粉体は形や大きさ,化学組成が不均一であるだけでなく、触媒材料として重要な比表面積が極めて小さいという致命的な問題点を持つ。本研究では、高活性な可視光応答型光触媒を得るために、均一な組成と高い比表面積を持つ試料の調製方法を確立するとともに、詳細なキャラクタリゼーションと電子構造解析の実施により、光触媒能の発現機構の解明と可視光波長域において動作可能な光触媒の創製を行うことを目的とする。 平成22年度までの研究の遂行により、クエン酸錯体法により合成したCaBi金属錯体は、空気中で熱分解すると、固相反応法よりも100度以上低温で単相のCa_4Bi_6O_<13>が生成し、高いメチレンブルー分解活性を示すことを明らかにした。平成23年度では、その他の有機酸として、マロン酸,リンゴ酸,シュウ酸等を使用してCa_4Bi_6O_<13>の合成を試みる一方、Ca_4Bi_6O_<13>のバンドギャップを狭窄化するために、Ca_4Bi_6O_<13>に対する不純物(Sr)の添加効果についても検討した。各有機酸を用いて得られた試料に関するXRD測定の結果から、クエン酸錯体法がCa_4Bi_6O_<13>の高純度粉体を得るための合成方法として最も優れていることがわかった。熱重量分析の結果から、有機酸と硝酸塩の熱分解温度との関係が重要であることが示唆された。クエン酸錯体法によりCa_4Bi_6O_<13>への不純物ドープを行うことにより、光触媒活性の向上を企図した。Sr系不純物の添加は、僅かではあるがバンドギャップの狭窄化及び光触媒活性の向上が確認できた。
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