研究概要 |
最近、酸化チタンよりも小さなバンドギャップを持つCaO-Bi2O3系酸化物が、可視光応答型光触媒として注目されている。本研究では、高活性な可視光応答型光触媒の調製方法を確立するとともに、詳細なキャラクタリゼーションと電子構造解析の実施により、光触媒能の発現機構を解明することを目的とする。 平成24年度では、Ca4Bi6O13結晶に関する第一原理エネルギーバンド計算を実施するとともに、複素誘電関数を導出し、光学物性(光学伝導度,エネルギー損失関数及び吸収係数等)の理論値を導いた。エネルギーバンド計算から、Ca4Bi6O13は直接遷移型の固体物質であり、価電子帯の頂上及び伝導帯の底部付近のエネルギーバンドが分散していることが明らかとなった。状態密度解析から、伝導帯の底部は主にBi 6p – O 2p 間の相互作用,上部はCa 3d軌道によって支配され、価電子帯の下部は主にBi 6s軌道, 上部は主にO 2p軌道からなることがわかった。特に、価電子帯頂上では、Bi 6sとO 2pが混成するためバンド分散が大きいことが判明した。複素誘電関数では理論的な屈折率は2.30と見積もられ、価電子帯頂上と伝導帯底間のバンド間遷移には強い光学異方性が見られた。また、Ca4Bi6O13結晶は、歪んだBi配位多面体から構成されており、その多面体中に発生した電気双極子モーメントが光生成したホールと電子の分離を促進しているため、Ca4Bi6O13の高い光触媒活性が発現していると考えられる。
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