本研究では、過塩素酸イオンを選択的に吸着する多孔性鉄系水酸化物の開発ために、細孔の縦方向のFe(OH)6八面体の連結数をm、横方向をnとして[m×n]と表記した場合に、[2×3]または[3×3]の細孔構造を持ち、かつ、陰イオン交換性を有する新規多孔体の合成を目指す。本年度は、既知の[2x2]トンネル構造を持つ鉄系水酸化物(アカガナイト)の合成条件を変えて新規な多孔体の合成を試みるとともに、イオン交換性を持たない層状鉄系水酸化物(レピドクロサイト)にイオン交換性を付与する方法、透過電子顕微鏡による細孔構造の観察法について検討した。 塩化鉄の加水分解により合成されるアカガナイトの原料に硫酸鉄や硝酸鉄を用いたり、反応溶液の反応温度やpHを変えて合成したが、[2×3]や[3×3]の細孔構造は形成しなかった。一方、イオン交換性を持たないレピドクロサイトの原料となる塩化鉄の一部をオキシ塩化ジルコニウムに変えて合成したサンプルは、溶液中において過塩素酸イオン、リン酸イオン、臭素イオン、硝酸イオン、硫酸イオンを吸着することがわかった。ジルコニウムの含有量が高いほど陰イオンの吸着量が高く、特に、リン酸イオンに対しては1mmol/g以上の吸着量を示した。透過電子顕微鏡による細孔構造の観察方法の検討は、合成アカガナイトを用いて行った。合成アカガナイトは長さ100~200nm、幅10~20nmのロッド状粒子であり、透過電子顕微鏡内でサンプルを傾斜して粒子の長軸方向から観察することで細孔の構造を観察できることを確認した。また、観察時の電子線照射に伴う結晶構造の崩壊はなかった。
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