研究課題/領域番号 |
22550188
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研究機関 | 株式会社豊田中央研究所 |
研究代表者 |
森川 健志 株式会社豊田中央研究所, 先端研究センター・連携研究・光エネルギー貯蔵プログラム, 主席研究員PM (70394666)
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キーワード | 光触媒 / 窒素ドープ / 酸化タンタル / 酸化銅 / 酸化鉄 / 光電流 / 触媒・化学プロセス / 無機工業化学 |
研究概要 |
本年度の研究実施計画は、1. p型半導体特性を有するNドープCu_2OおよびNドープTa_2O_5の表面に、金属や金属錯体の助触媒を坦持させることにより、光触媒的な水素生成速度を向上させる、2. 各種NドープFe,Cu系酸化物半導体の可視光触媒特性と物理的特性の相関を整理する、3. FeやCuを含む酸化物へ第三元素を導入した半導体へN、C等のアニオン種ドーピングを行い、可視光領域での吸光度向上とp型半導体化を行う、ことであった。 研究の結果、1.では、N-Ta_2O_5粉末においてアセトニトリル中、トリエタノールアミン犠牲薬(電子&プロトン源)の存在下における可視光照射下での水素生成速度を、0.5%-Pt担持の結果10.5倍向上させた。またN-Cu_20およびCaFe_2O_4の電極上にRu錯体触媒を添加した系では、アセトニトリル中において光電気化学的なCO_2還元に由来すると推定される電流が、0.0V(vs NHE換算)の電位においてそれぞれ約11倍と3倍に向上することを明らかにした。2.では、1.におけるRu錯体/半導体の組合せ触媒の光電流の大きさが、Ru錯体のCO_2還元電位と各半導体の伝導帯最下部電位との位置関係と相関があり、両者の電位差ΔGが光CO_2還元電流向上のための重要な因子であるというN-Ta_2O_5/Ru錯体光触媒(既報)の議論を裏付けるデータを得た。3.では、22年度に開発したN-Fe_2O_3にさらに金属元素Mをドープすることにより、可視光領域での吸光度に変化はないものの、p型半導体電極特性を大きく向上させることに成功した。すなわちMとNの両ドープによって、この膜の表面にさらにPtを担持した(M,N)-Fe_2O_3/Ptからの水素生成由来と推定される光電流を、-1.0V vs Ag/AgClのバイアス条件下において、N-Fe_2O_3/PtおよびM-Fe_2O_3/Ptに対して各々7.8倍と3.9倍に向上させた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題は大きく以下3項目から構成されており、その状況も以下の通りである。 1.光触媒的な水素生成速度向上:特定条件下において10.5倍向上させた 2.可視光触媒特性と物理的特性の相関:Ru錯体のCO_2還元電位と各半導体の伝導帯最下部電位の電位差ΔGが光CO_2還元電流向上のための重要な因子であると裏付けるデータを得た 3.p型半導体化:N-Fe_2O_3にさらに金属元素をドープすることにより、可視光領域での吸光度を向上させた。 以上より当初の計画通り進行していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は本研究開発の最終年度であり、期間内に、まだ報告例のないp型N-C_u2O、p型N-ZnO、p型N-Ta_2O_5の光触媒的な水素生成能力を明らかにする。また、今年度成果の論文投稿を積極的に行う。 (1):昨年度までに開発した材料の合成条件の最適化と、溶液合成法によるナノ粒子化による光触媒反応効率の向上を行い、高活性といわれるTiドープFe_2O_3と比較して3倍向上の光水素反応速度をもつFe系化合物を実現する。 (2):Cu系化合物でも同様に開発した材料の合成条件の最適化と、溶液合成法によるナノ粒子化によって、Cu_2Oと比較して3倍の触媒寿命をねらう。 (3):さらには、(2)の材料と、平成22年度に検討したp型N-Cu_2O、p型N-ZnO、p型N-Ta_2O_5や、n型半導体であるFe_2O_3、N-TiO_2やWO_3などとのタンデム接続構造により、アニオンドープ酸化物を用いた電気バイアス無しでの可視光照射下における光水素生成を実現する。
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