研究課題/領域番号 |
22550189
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
中嶋 健 東北大学, 原子分子材料科学高等研究機構, 准教授 (90301770)
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キーワード | 高分子材料物性 / 高分子一本鎖 / 原子間力顕微鏡 |
研究概要 |
本研究では、研究代表者が開発してきた原子間力顕微鏡を基礎に据えた高分子一本鎖のナノフィッシング(高分子一本鎖伸長)技術を改良し、ノイズ解析ナノフィッシング技術として昇華させるとともに、それを高分子一本鎖のダイナミクス研究に応用する。それによって、高分子物理学の中でも理論主導で実験的確証の少ない「高分子一本鎖の物理学」を実験主導の学問として確立することを目指している。従来行ってきた動的ナノフィッシングでは高分子一本鎖の動的情報を得るために探針に強制振動を加えなければならなかった。高分子鎖の見かけのバネ定数、摩擦係数を求めることができたが、測定そのものの困難が常に伴った。 一方、揺動散逸定理の一表現として、溶媒の中に置かれた「探針+高分子一本鎖」の系が溶媒分子から感じる揺動力をスペクトル解析することで動的ナノフィッシングと同等の情報を取得することができるのではないか。そのような考えから本研究を起案した。この予測のもとに装置外部に設置したADボードによるデータ収録とオフラインでの解析という予備的な測定を行い、ナノフィッシング時に得られた信号のノイズ解析を行った。基板と接触時、高分子鎖がランダムコイル状態になっている時、高分子鎖が伸び切り鎖近傍の状態にある時、そして結合破断が生じカンチレバーが自由な状態に戻った時ではそれぞれパワースペクトル密度(PSD)が異なることが分かった。そこで高速デジタイザと高速コンピュータを組み合わせ、リアルタイムでのノイズ解析を可能にする装置を開発することを試みようとした。その後、東日本大震災の影響でその計画は中断せざるを得なかった。 そこで本年度は、その代替として通常のナノフィッシングを新たな系に展開することを中心に研究を進めた。水溶系の温度感応性ポリマーであるポリイソピルアクリルアミドを主に用いた。水系の場合、これまでの有機溶媒系とは異なり、基板として用いる金の表面に付着した不純物の影響がなかなか取り除けず再現性のよい結果が得られなかったが、今年度新規に購入したUVオゾンクリーナーによる処理で事態が改善した。現在は、温度依存性に関する実験をほぼ終え、論文を準備している。またこのポリマーは共通貧溶媒性を示す興味深いポリマーでそのメカニズムの追求を開始したところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
東日本大震災の影響で、本研究で主に利用しようとしていた装置(原子間力顕微鏡)が破損し、その修理に2011年12月までの期間を要した。装置の改良・開発を目指していた当初の予定は従って大幅に遅れざるを得なかった。しかしながら、できることとして最低限の装置を組み、高分子一本鎖の研究そのものには大きな展開を見ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
上記のように装置の開発は昨年度停止せざるを得なかった。今年度はその開発を再開する。当初の予定では開発した装置を使って応用展開を計るつもりであったが、研究計画を見直し装置開発に専念するつもりである。
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