高分子量前駆体について、合成条件が得られる前駆体の構造にどのような影響を及ぼすかについて、核磁気共鳴、赤外分光、元素分析、サイズ排除クロマトグラフ-などを用いて詳細に検討した。その結果、反応溶媒の種類、反応温度、反応時間などが生成物の分子量に大きな影響を与え、さらには硬化物の耐熱性などに影響を与えることが明らかになった。一般的には分子量の小さい前駆体から得られる硬化物の方がガラス転移温度が高いなど、耐熱性が高い傾向があった。 また、ベンゾオキサジンの分子骨格中に剛直なメソゲン基と柔軟なスペーサーを導入して液晶性を発現させる試みとして、液晶フェノールを原料として各種アミン、ホルムアルデヒドとを組み合わせ、液晶性ベンゾオキサジンを合成することに成功した。液晶性の発現は示差走査熱量計および偏光顕微鏡で確認した。種々のメソゲン基を検討したが、アゾメチン、エステル等の官能基を芳香環に連結して用いたメソゲン基が有効であった。本研究で得られた液晶ベンゾオキサジンは降温時のみならず昇温時にも液晶性を示すことが明らかになった。柔軟なユニットとして脂肪族鎖を用いた場合、その長さが短いほど、液晶温度範囲が高温側にシフトした。ベンゾキサジンの開環重合挙動を示差走査熱量計で測定したが、液晶性を保持したままでベンゾオキサジンを開環重合で硬化させるうえで、液晶温度範囲が高温側にシフトして開環重合温度に近いことは硬化樹脂のネットワークの配向制御の上で大きな利点となる。なお、単官能の液晶ベンゾオキサジンを加熱により開環重合させ、脆いものの硬い硬化フィルムを作製した。
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