新しいフェノール樹脂の分子設計・材料設計による高機能化・高性能化について検討した。その結果、ポリマーアロイおよび共重合の手法、新しいベンゾオキサジンの分子設計等により、当初の目的が達成できた。具体的な実績を以下に述べる。 1)高分子量ベンゾオキサジンを合成し、ビスマレイミドとブレンドして反応させることで耐熱性、強靭性等に一段と優れた熱硬化性樹脂を得た。ベンゾオキサジンの開環重合で生成するフェノール性水酸基がビスマレイミドの二重結合とさらなる架橋反応を行い、耐熱性と柔軟性に優れるエーテル基が生成することを赤外分光やモデル反応で確認した。 2)液晶性を示すベンゾオキサジンを合成した。ベンゾオキサジンは環状構造で硬くはあるが平面構造ではないのでメソゲンにはなれない。そこで、エステル基やアゾメチン基をベンゼン環と組み合わせてメソゲンとし、フレキシブルな脂肪族鎖とのバランスを図ることで、液晶性ベンゾオキサジンを合成することができた。液晶ベンゾキサジンの分子構造について更に種々検討を加え、液晶状態でベンゾオキサジンが開環重合する系、二官能化により柔軟で強靭な液晶ベンゾオキサジン硬化物が得られる系などを合成することに成功した。 3)ベンゾオキサジンの特徴は、その強い分子内および分子間の水素結合にある。そこで、ベンゾオキサジン分子中にピリジン官能基を導入して、さらに水素結合を強化した。その結果、得られる硬化物のガラス転移温度や熱分解残渣量が向上するなど、耐熱性が顕著に向上した。 4)ビニル基を導入したベンゾオキサジンを合成し、ベンゾオキサジンの開環反応に加えてビニル基の架橋によって得られる硬化物の耐熱性が向上することを見出した。さらに、種々のビニルモノマーをベンゾオキサジンに導入したビニル基と共重合させることで、耐熱性や靱性が向上する新規な硬化物を得た。
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