パルプが有するフィブリル構造を利用し、極小表面張力の超臨界二酸化炭素(scCO_2)を乾燥媒体にもちいることで、低凝集のセルロースナノファイバーを取り出す技術の確立を目指した。 まず、木材パルプをフッ化テトラブチルアンモニウム(TBAF)/ジメチルスルホキシド(DMSO)混合溶液に溶解させゲルを調製した。適度な硬さを持つ均一なゲルの調製には超音波ホモジナイザーが有効であり、最適なパルプおよびTBAF濃度とホモジナイザー処理時間および処理温度を確認した。次に、得られたゲルからTBAFおよびDMSOを除去するため、置換溶媒の比に気をつけながら収縮のない同サイズのセルロースーアルコゲルを調製した。当初の予定ではscCO_2によりTBAFおよびDMSOを直接洗浄・除去する予定であったが、いずれもscCO_2への溶解度が低く、第二成分を添加して極性を変えても除去が困難であったため、メタノールで置換する方法に変更した。その後、ゲル中のメタノールをscCO_2で置換し乾燥した。その際のCO_2圧力、温度、流量、乾燥時間、放圧速度などを検討し、アルコゲルの70%体積のエアロゲルを得るにいたった。走査型顕微鏡で観察したモルフォロジーは、構成繊維の直径が100nm以下のクモの巣状であり、単繊維のセルロースナノファイバーを取り出すには至らなかった。しかし、複合材のフィラーとしては、充分利用できるモルフォロジーであった。 当該研究成果により、強力な水素受容体であるフッ化アンモニウム塩を使ったゲル調製と溶媒置換および超臨界乾燥の組合せにより、見かけ密度が0.013g/cm^3で細孔径が数十nm~数μmのセルロースエアロゲルが得られた。
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