研究課題/領域番号 |
22550196
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
奥林 里子 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 准教授 (00284737)
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キーワード | 環境材料 / 材料加工・処理 / ナノ材料 / セルロース / 超臨界流体 |
研究概要 |
木材パルプ(pulp)をフッ化テトラブチルアンモニウム(TBAF)/ジメチルスルホキシド(DMSO)混合溶液に溶解させて得られるゲルをメタノールで溶媒置換し、極小表面張力の超臨界二酸化炭素(scCO_2)による乾燥で得られるスポンジ状セルロースナノファイバー(SLCN)のモルフォロジーと、各調製条件との関係を検討した。その結果、pulpの濃度が高いほどSLCNの密度は高くなりスポンジ構造は均一かつ密になった。また、pulp/TBAF/DMSOゲルに含まれる水分量が多くなるとスポンジ構造が不均一になり、scCO_2での乾燥条件については、気液界面が発生しない温度での乾燥でのみスポンジ構造が見られ、圧力や流速にはほとんど影響されなかった。またスポンジの孔の大きささや分布はscCO_2の放圧速度に大きく依存し、遅いほど収縮の少ない低密度のSLCNが得られた。さらに、ゲルの調製条件がpulp/TBAF/DMSOゲル→pulp/methanolゲル→SLCNの体積変化に及ぼす影響を検討したところ、SLCNの構造はpulp/TBAF/DMSOゲルの構造に大きく依存することが分かった。 次に、通常のX線散乱(WAXS)ではSLCNのような低密度の材料の測定には時間が掛かるため、放射光を利用したWAXSによりSLCNの結晶構造を分析したところ、ほとんどが非結晶性で当初の目的である高結晶性のSLCNは得られなかった。また、SLCNの形状安定が非常に低く、基礎物性の測定が通常の方法では困難であった。一方、プラスチックとの複合材については、SLCNからの調製が難しく、今回はpulp/methanolゲルからの溶媒置換によるポリ乳酸の注入やメタクリル酸メチルの注入・重合(PMMA)により調製を試みた。その結果、透明でSLCNの充填率が3%前後のSLCN/PMMA複合物が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
得られたスポンジ状セルロースナノファイバーの形状安定性が予想以上に悪く、通常の構造・物性評価法が適用できなかった。そのため、別の分析装置の手配や測定技術習得に時間を費やしており、「(3)やや遅れている」の自己評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
固体高分子の構造解析に詳しい研究者にアドバイスを受け、光散乱法や高エネルギーの放射光を利用したスポンジ状セルロースナノファイバーの構造解析を進めるとともに、簡易法としてFT-IRや粘度測定および画像処理ソフトを利用した構造解析も併せて行う。物性評価については、直接測定が困難な場合にはスポンジ状セルロースナノファイバーを充填材としたプラスチックとの複合材料を作製し、その物性評価を行うことで間接的に評価する。
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