異なる植物より抽出した5種類セルロースを、フッ化テトラブチルアンモニウム(TBAF)/ジメチルスルホキシド(DMSO)混合溶液に溶解させて得られるゲル(DMSOゲル)をメタノールで溶媒置換し(アルコゲル)、極小表面張力の超臨界二酸化炭素(scCO2)による乾燥で得られるスポンジ状セルロースナノファイバー(エアロゲル)のモルフォロジーと、各調製条件との関係を検討した。 その結果、全てのセルロースにおいて、セルロース濃度の増加に伴いアルコゲルおよびエアロゲルともに弾性率が増加し、scCO2で乾燥することでゲル全体は凝集してもアルコゲル内のナノ構造は保たれると分かった。しかしその増加は濃度に対して正比例的ではなく、ある濃度を超えたとき大きく増加した。さらに電子顕微鏡で観察したところ、すべてのセルロースエアロゲルで3次元ネットワークが観察された。またその画像解析から細孔サイズや見掛けの空隙率などを算出し比較したところ、セルロース濃度を高くしていく程、全てのセルロース原料で大きなポアが消滅し、より均一で細かいセルロースネットワークが発現することが分かった。弾性率の結果と併せると、低濃度の溶液からゲルを形成する際でも分子は均一に存在せず、水素結合の相互作用が及ぶ距離に分子が安定に存在するために、中程度の均一なポアは形成されないと考えた。X線回折パターンから、エアロゲルの結晶性はいずれも原料と比較して顕著に低下しており、本年度の目標の一つであった結晶性の高いエアロゲルを得ることは出来なかった。 次に、3次元ネットワーク構造をもったセルロースをフィラーとしたポリメチルメタクリレート(PMMA)コンポジットの調製を試みた。アルコゲルをMMAで置換・重合することで透明なコンポジットが得られたが、DMSOゲルと比較してかなり収縮した。
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