研究概要 |
ポリシルセスキオキサンは、シロキサン結合から形成される三次元ネットワーク構造のポリマーであり、各ケイ素原子上に有機置換基を1つ有する構造上の特徴がある。このポリマーは対応するトリアルコキシシランをモノマーとし、その加水分解・重縮合により簡便に合成できる。また、得られるポリマーには分子末端に水酸基を多く有しており、金属酸化物基板上の水酸基と容易に脱水縮合できるため、ポリマーが共有結合を介して基板表面に密着することが可能である。この特徴をいかし、ケイ素原子上の有機置換基に光・電子機能性官能基を導入すれば、基板表面に様々な機能を付与することが可能になる。 このような観点から本年度は、構造制御したオリゴチオフェンを有する新規シルセスキオキサンの合成を行い、得られるポリマーのガラスおよびITO基板上への固定化を検討した。その結果、オリゴチオフェンとしてチオフェン8量体を導入した場合、固定化したポリマーは比較的高い機械的強度を有する優れたポリマーであることが分かった。この結果は色素増感太陽電池に最もよく用いられる酸化チタンへも展開可能であり、今後、色素増感太陽電池への応用にも期待が持てる。また、このポリマー膜の電気化学的ドーピングを行ったところ、ドーピング時に印加する電圧に依存して生成する酸化種が一電子酸化種から二電子酸化種へと変化し、最終的には膜内のオリゴチオフェンがすべて二電子酸化されていることを明らかにした。その際、ドーピング率に依存して電気伝導度が10^<-6>S cm^<-1>から10^<-3>S cm^<-1>まで劇的に変化することも見出した。以上の結果は、王立化学協会誌"Polymer Chemistry"に高い評価を得て掲載された(Polymer Chemistry, vol.2,pp.868-872(2011))。
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