研究課題/領域番号 |
22550198
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
今榮 一郎 広島大学, 大学院・工学研究院, 准教授 (90293399)
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キーワード | オリゴチオフェン / ポリシルセスキオキサン / 重縮合 / 金属酸化物 / 電気化学的ドーピング / 電気伝導度 |
研究概要 |
ポリシルセスキオキサンは、シロキサン結合から形成される三次元ネットワーク構造のポリマーであり、各ケイ素原子上に有機置換基を1つ有する構造上の特徴がある。このポリマーは対応するトリアルコキシシランをモノマーとし、その加水分解・重縮合により簡便に合成できる。また、得られるポリマーには分子末端に水酸基を多く有しており、金属酸化物基板上の水酸基と容易に脱水縮合できるため、ポリマーが共有結合を介して基板表面に密着することが可能である。この特徴をいかし、ケイ素原子上の有機置換基に光・電子機能性官能にを導入すれば、基板表面に様々な機能を付与することが可能になる。このような背景から、研究代表者はこれまでに構造制御したアルキル置換オリゴチオフェン(チオフェン8量体)を有する新規ポリシルセスキオキサンの合成に成功し、それらの光学的、電気化学的、電気的性質について調査してきた。 今年度はさらに高い導電性を付与することを目的として、オリゴチオフェンユニットとして、チオフェン10量体ならびに12量体を有するポリシルセスキオキサンを合成し、その諸物性についてオリゴチオフェン骨格と関連付けて検討した。その結果、得られたポリマーの電気伝導度はオリゴチオフェン部分の共役鎖長が長くなるにつれて高くなる傾向があることが分かった。また、これらの物性には両末端に導入したシルセスキオキサンのネットワーク構造が大きく影響していることも分かった。 一方、導入するオリゴチオフェンユニットの広範化を求めて、アルコキシ基を有するチオフェン環を部分的に含むオリゴチオフェンの合成にも着手した。得られたオリゴチオフェンはドナー性置換基の影響により酸化電位が劇的に低下することが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の予定ではチオフェン10量体や12量体を有するポリシルセスキオキサンの合成と物性評価を行うことを計画していたが、それに加えて、翌年度以降に計画していたアルコキシ基を有するチオフェン環を含むオリゴチオフェンの合成にも着手できているため。
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今後の研究の推進方策 |
最近合成に成功した、アルコキシ基を有するチオフェン環を部分的に含むオリゴチオフェンの基礎物性について評価するとともに、これらをポリシルセスキオキサンに導入することにより機械的強度の向上を目指す。 また一方、より簡便に透明導電膜を作製する目的で、市販品のPEDOT-PSSとテトラエトキシシランの混合ゾルーゲル反応によって、高強度透明導電膜の作製を目指す。
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