研究概要 |
ポリシルセスキオキサンは、シロキサン結合から形成される三次元ネットワーク構造のポリマーであり、各ケイ素原子上に有機置換基を1つ有する構造上の特徴がある。このポリマーは対応するトリアルコキシシランをモノマーとし、その加水分解・重縮合(ゾル-ゲル反応)により簡便に合成できる。また、得られるポリマーには分子末端に水酸基を多く有しており、金属酸化物基板上の水酸基と容易に脱水縮合できるため、ポリマーが共有結合を介して基板表面に密着することが可能である。このような背景から、研究代表者はこれまでに構造制御したオリゴチオフェンを有する新規ポリシルセスキオキサンの合成に成功し、それらの光学的、電気化学的、電気的性質について調査してきた。その結果、導入するオリゴチオフェンの共役鎖長が長くなるにつれて、得られるポリマー膜の電気伝導度が高くなることを見出した。また、オリゴチオフェン分子の両末端にポリシルセスキオキサンを導入すると、ポリマーネットワークによる束縛が、オリゴチオフェン部位のコンフォメーションを阻害し、電荷輸送特性に影響を及ぼすことも明らかにした。 さらにオリゴチオフェンの側鎖に3,4-エチレンジオキシ基を導入したところ、分子の平面性が向上し、電気伝導性も増加傾向にあることを見出した。しかしながら、得られるオリゴチオフェンの溶解性が乏しいため、ポリシルセスキオキサンの導入が困難であるという課題が残っていた。 このような観点から、今年度は長鎖アルキル基を含むアルコキシチオフェンを部分的に導入したオリゴチオフェンの新規合成法の開発を行った。その結果、チオフェン2、4、8量体の合成に成功するとともに、それらの中に導入したアルコキシ基の数や位置によって、オリゴチオフェンの電子物性を容易に制御できることを明らかにした。
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