本研究では、エンドトキシン(リボ多糖:LPS)を選択吸着するための細孔制御シクロデキストリン架橋球状粒子を調製した。同粒子表面のシクロデキストリン由来キャビティ中にLPSを選択的に取込むことを利用して、DNAワクチン等の注射溶液からのLPS選択除去を試みた。 ケイ酸ナトリウム水溶液に水酸化ナトリウムとβ-およびγ-CyDを溶解させ、50℃で1時間撹拝した後、エピクロロヒドリン(架橋剤)を加えて65℃で24時間撹拝した。生成物をろ取・洗浄することで種々のCyD架橋粒子(20-200μm)を得た。得られた粒子を用いてバッチ法によるLPS吸着実験を行った。 β-及びγ-CyD架橋粒子、アミノ化γ-CyD架橋粒子と市販のアミノ化粒子(Detoxi-gel、ET-clean)とのLPS吸着除去能(LPS残存濃度)を比較した。CyD架橋粒子は、CyDのキャビティでしかLPSを吸着できないために、市販のアミノ化粒子に比べて吸着除去能が劣るが、中性域でイオン強度=0.05~0.2の溶液環境下で、100EU/mLのLPS濃度を20EU/mL程度の濃度まで除去できることが分かった。また、アミノ化cyD架橋粒子は、10EU/mL以下のLPS濃度まで吸着除去できた。さらに、種々の吸着剤のLPS/DNA混合溶液からのLPS選択吸着能を比較した。その結果、アミノ化粒子は、LPSとDNAの両方に対して高い吸着能を示したのに対して、γ-CyD架橋粒子はDNAを吸着することなく、LPSのみに選択性を示した。以上の結果から、γ-CyD架橋粒子は、主に静電性でLPSを吸着するアミノ化粒子と比べるとLPS吸着能は劣るが、DNAとの相互作用をほとんど示さないため、LPS/DNA混合溶液からのLPS選択除去剤として大いに期待できることが分かった。
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