研究課題/領域番号 |
22550201
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研究機関 | 神奈川大学 |
研究代表者 |
池原 飛之 神奈川大学, 工学部, 教授 (90242015)
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研究分担者 |
片岡 利介 神奈川大学, 工学部, 特別助教 (20514425)
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キーワード | 高分子構造・物性 / ブロック共重合体 / 球晶 / ラメラ構造 / 結晶化 / 透過電子顕微鏡 / 高分子ブレンド / プロトン伝導 |
研究概要 |
1.相溶の結晶性ブロック共重合体であるpoly(ethylene succinate)-block-poly(ethylene oxide)(PES-b-PEO)を合成し、示差走査熱量計や、パルス法NMRにより、等温結晶化の測定を行ったところ、同組成のブレンドと比較してPESの結晶化開始時間と半結晶化時間はともに遅くなった。これはブロック共重合体では、PESが結晶化する際、PEO鎖を引きずりながらコンフォメーション変化をするためである。2.相溶性のブロック共重合体において、ラメラ間での結晶化に対するブロック間結合の影響について調べるため、酸により開裂するアセタール基をブロック間結合に導入し、光酸発生剤と組み合わせることで、紫外光によりブロック間結合を切断可能なコポリマーの合成を試みた。この結果、オリゴマー同士の結合によるブロックコポリマーは合成可能であったが、分子量が高くなると十分な収量は得られなかった。そこで、予め高分子末端にアセタール基を導入し、反応性の高いクリック反応による分子同士の反応を検討したところ、モデル物質を得ることに成功し、また紫外光によるアセタール基の切断も可能であった。3.プロトン伝導性を有するブロック共重合体を得るため、結晶性のポリマーである芳香族ポリアミド末端に開始剤を導入し、また同様の化学構造を有するモデル開始剤から、強酸性高分子であるpoly(acrylamido methylpropanesulfonate)(PAMPS)が重合可能であった。また、比較として、非晶性高分子とPAMPSのブロック共重合体を合成し、透過電子顕微鏡にて観察した結果、PAMPS導入率が高いほど、共連続構造に近いナノ相分離構造を形成し、熱アニーリングによる相構造の本質的な変化は見られなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
目的とする結晶性ブロック共重合体の合成が当初の計画よりも困難であり、合成法を低分子のモデル化合物などにより再検討を行う必要性があった。またそのため、物性測定がモデル化合物を対象としたものに留まっている研究もある。
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今後の研究の推進方策 |
1.互いに相溶する結晶性/結晶性ブロック共重合体の結晶化挙動の解析では、更に分子量の異なる高分子を合成して測定を行い、議論する。また、低融点成分の結晶化については、パルス法NMR,熱量測定いずれも手法においても、信頼性のあるデータが得られていないため、結晶化条件や分子量などを変え、引き続き検討する。2.アセタール結合を有するブロック共重合体の合成には、昨年度までに得られた知見をベースに、予め高分子末端にアセタール基を導入した後、反応性の高いクリック反応により、高分子同士を結合させる。得られたコポリマーの結晶化挙動の解析には主に偏光顕微鏡を用い、光照射前後における球晶成長速度を測定し、解析する。3.プロトン伝導性ブロック共重合体については、モデル開始剤を用いた強酸性高分子の重合と、結晶性の芳香族ポリアミド末端への開始剤導入に成功しているため、結晶性高分子からの強酸性高分子の重合を行う。得られた結晶性のコポリマーは、透過電子顕微鏡により相構造の観察を行うとともに、プロトン伝導について測定する。
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