1.相溶する結晶性高分子で構成されるポリエチレンサクシネート/ポリエチレンオキシドブロック共重合体 (PES-b-PEO)において、PEOブロックの分子量を変化させ、PES結晶ラメラスタックの長周期とPESラメラ間におけるPEOの結晶化ダイナミクスの関係を調べた。ブロックコポリマーではPEO分子量が増加するとともにPESのラメラ間隔が広がったが、同組成のポリマーブレンドでは、ラメラ間隔に明確なPEO分子量依存性は無かった。またコポリマーにおけるPESラメラ間を成長するPEOの結晶化速度は、PEOの分子量が増加するほど速くなった。これは、PEO分子量の大きいコポリマーではPESのラメラ間隔が広がり、この空間で結晶化するPEOの分子運動性が高くなったこと、およびラメラ間非晶域における組成が変化したことが原因として考えられる。 2.PES-b-PEOにおいて、アセタール基をブロック間に導入する方法について検討した。この際、PEOとPESの末端どうしをクリック反応により結合させたところ、高収率で目的のPES-b-PEOが得られた。このコポリマーのブロック間を繋ぐアセタール基は、PESが結晶化しPEOが融解した状態で、紫外光と光酸発生剤を用いることで切断可能であった。 3.結晶性ブロックとプロトン伝導性ブロックからなるポリエチレン/ポリスチレンスルホン酸ブロック共重合体を合成した。このコポリマーを製膜すると、水に対して膨潤度の低い薄膜が得られた。これは試料の結晶性ブロックが膜の膨潤を抑制しているからであると考えられる。この膜の結晶化温度を変化させプロトン伝導性を測定すると、結晶化温度が低いコポリマーにおいて高いプロトン伝導度を示した。これは、結晶化温度が結晶化度に与える影響、およびラメラ晶とラメラ間非晶域のサイズに与える影響の二つの観点から説明できると考えられる。
|