研究課題
本研究の目的は、エポキシ樹脂硬化物の網目鎖内部あるいは網目鎖間に導入した空間が、硬化物の誘電特性および光学特性におよぼす影響を明らかにすることである。1年目は、ラダー状、ケージ状およびダブルデッカー状シルセスキオキサン骨格エポキシ樹脂を汎用のビスフェノールA型エポキシ樹脂に配合した硬化物について、網目構造中の空間の大きさを見積もる手法を確立し、硬化物の密度や屈折率、誘電率などの特性との関係について検討した。まず、網目鎖の最安定構造を"半経験的分子軌道法(MOPAC)"により決定した。この最安定構造のVan der Waals体積をBondiの式を用いて求めた。さらに、この最安定構造上をメチル基が転がる時の表面(コノリー表面)が形づくる立体の体積とVan der Waals体積との差を算出した。これにより、網目鎖構造中のメチル基が侵入できない空間を見積もり、これを網目鎖の立体構造中に生じた空間の大きさとした。さらに、シルセスキオキサン骨格を含む網目鎖の繰り返し単位全体に対してコノリー表面が囲む空間の大きさを求め、Van der Waals体積との差から網目鎖間の空間の大きさを算出した。その結果、いずれのシルセスキオキサン骨格を持つ硬化物でも網目鎖構造の内部に生じる空間は、10~30Å^3程度の小さなものであるのに対して、網目鎖間の空間には一桁以上大きな空間の生じることが示された。特にケージ状およびダブルデッカー状シルセスキオキサンではその外周の8個のベンゼン環により非常に大きな空間が生じた。この網目鎖構造中に生じた空間は、硬化物の密度および屈折率と誘電率に大きな影響を及ぼし、網目鎖中のケージ状およびダブルデッカー状シルセスキオキサンの濃度増加に伴ってこれらの値の明瞭な低下が観察された。
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Journal of Materials Science
巻: 2010,45 ページ: 6159-6165