リチウムイオン電池の安全性向上のため、新規なアプローチによる難燃型ポリマー電解質を開発した。難燃性のイオン液体モノマーに表面開始リビングラジカル重合を適用し、イオン液体ポリマーブラシ/シリカ複合微粒子(PSiP)を合成した。PSiPは少量のイオン液体中でブラシ鎖の立体斥力により三次元配列した疑似コロイド結晶を形成する。特定の条件下で疑似コロイド結晶を固体化出来ることを見出した。PSiPの集積膜は固体でありながら、比較的高いイオン伝導性を示した。走査型電子顕微鏡観察によって、電解質マトリクスの微粒子は面心立法格子の規則配列構造を形成していることが明らかになった。粒子間隙には高い分子運動性を有するブラシ末端が連続したイオン伝導ネットワークチャネルが存在していると考えられ、その為に高いイオン伝導性を示すと予測できた。またイオン液体中においては、リチウムイオンはイオン液体のアニオンとの相互作用により、比較的大規模なクラスターを形成し、系の粘度が著しく上昇する為、イオン伝導性が大きく低下することが知られている。しかしながら、本微粒子集積ポリマー電解質内においては、濃厚ポリマーブラシ効果によりクラスター形成が抑制され、高いイオン移動性が保たれることが磁場勾配NMR測定によって明らかとなった。本研究では、この新しいポリマー電解質の合成と電気化学特性について明らかにすると共に、電解質のイオン伝導性、難燃性、固体膜特性を利用した高電圧電気化学デバイスが設計可能と考え、リチウムイオン電池の試作評価を行った。この新しい固体電解質の実用性をリチウムイオン電池で実証した。
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