研究概要 |
本研究では,化学的薄片剥離法により形成し可溶化したグラフェン薄片を,有機薄膜素子の構成材料として用いることによって,有機薄膜太陽電池および有機薄膜電界効果トランジスタ(FET)の性能を,現状よりも大きく引き上げることを目指している。平成22年度の研究では次の成果が得られた。 (1)ポリ(3-ヘキシルチオフェン)(P3HT)を活性層に用いた有機電界効果トランジスタ(FET)において,P3HT薄膜に可溶化酸化グラフェンを添加するとオン電流及び電界効果移動度が飛躍的に向上することが判明した。原子間力顕微鏡によるP3HT薄膜の観察から,酸化グラフェンを添加することによってP3HTナノファイバーの形成が促進されることが判明している。 (2)P3HT/可溶化C_<60>(PCBM)系バルクヘテロ接合太陽電池においても,可溶化酸化グラフェンを添加することによって光電変換効率が向上することが確認された。有機薄膜太陽電池においても,酸化グラフェン添加によってP3HTナノファイバーの形成が促進され,光電変換層内での正孔輸送効率が改善したことが光電変換効率の向上につながっていると考えられる。 (3)塗布形成グラフェン透明導電膜をソース・ドレイン・ゲート電極とする「透明有機FET」の作製を試み,その動作を実証した。 (4)有機薄膜太陽電池の正孔輸送層として,PEDOT:PSSの代わりに酸化グラフェン塗布膜を用いることを試み,PEDOT:PSSと比べ遜色のない光電変換効率が得られることを実証した。 (5)酸化グラフェン塗布膜上にペンタセン薄膜を成長すると,SiO_2やITO等の酸化物基板上とは異なり,ペンタセン分子が寝た形で配向して成長することが分かり,ペンタセンをドナーとして用いる有機薄膜太陽電池の光電変換効率を向上できる可能性が見いだされた。
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