研究課題/領域番号 |
22560005
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研究機関 | 長岡技術科学大学 |
研究代表者 |
内富 直隆 長岡技術科学大学, 工学部, 教授 (20313562)
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キーワード | 結晶工学 / 結晶成長 / 界面・界面物性 / 半導体 |
研究概要 |
本研究では、II-IV-V2磁性半導体ZnSnAs2:Mn薄膜の薄膜物性評価とそれを用いたInPベースの磁性量子構造の実現を目的としている。平成23年度では磁性半導体ZnSnAs2:Mn薄膜を含む磁性量子構造を作製するために、分子線エピタキシーによる結晶成長でリソグラフィーに適したMnホルダーの採用を試みインジウムフリーで磁性半導体ZnSnAs2:Mnの結晶成長できることを確認した。これにより均一性を除けば原則2インチInP基板上に結晶成長できるようになった。また、磁性量子構造に必要なZnSnAs2と格子整合するInGaAsやInAlAs膜について低温結晶成長を行い、ヘテロエピタキシーの検討を進めている。このように磁性量子構造の作製に必要な材料の成長条件が整ってきている。あわせて、プレーナ構造を用いたハンレ効果測定によりスピン伝導の測定を行うことも可能であり、リソグラフィー技術の検討を行っている。Spring8およびフォトンファクトリーを用いたZnSnAs2:Mnの蛍光X線ホログラフィーの測定では、薄膜にもかかわらず優れたデータが蓄積されつつある。現在、実験のホログラムの解析を進めているが、分子線エピタキシーで作製したZnSnAs2:Mn薄膜は、カルコパイライト構造を示すよりディスオーダーしたスファレライト構造を示すことを確認することができた。このような実験結果から強磁性発現の起源を考える場合、これまで研究が進められているIII-V族磁性半導体と類似したメカニズムを参考にすることができる。また、ZnSnAs2:Mn薄膜の熱処理効果の実験からは、格子間Mn原子の拡散に起因すると考えられる飽和磁化の増加と抵抗率の減少が確認された。一方、III-V族磁性半導体と異なりキュリー温度については大きな依存性を示さないことが特徴である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Mn添加ZnSnAs2薄膜はInP基板上にエピタキシャル成長するが、デバイスを作製するためにはリソグラフィーに適したインジウムフリーなMoホルダーを用いて結晶成長する必要がある。そのためにMoホルダーを新たに作製しMn添加ZnSnAs2薄膜の結晶成長条件の検討を進めている。また、ZnSnAs2:Mn薄膜の局所構造解析については、蛍光X線ホログラムを測定し概ね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
磁性半導体の結晶成長では分子線エピタキシーを用いる。たとえば、基板加熱ユニットやターボボンブの破損などにより実験が遅れることが予想される。従って、そのバックアップ部品を常備しておくことが必要である。磁性半導体デバイスを作製するために必要な微細リソグラフィー技術に関しては学内で実行すうことができないことから、その場合には他大学の強力を仰ぐ必要がある。
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