研究課題/領域番号 |
22560009
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
喜多 隆介 静岡大学, 創造科学技術大学院, 教授 (90303528)
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キーワード | 酸化物高温超伝導体 / 有機金属塗布法 / 薄膜 / 結晶成長 / ナノ構造 / 人工ピニングセンタ |
研究概要 |
本研究は、ケミカルドーピングを用いたナノエンジニアリング法(CD-NE法)によりナノ組織が制御された高機能超伝導薄膜形成プロセスを開発するとともに、高分解能その場観察技術および独自の3次元可視化技術により、これまで未解明であったナノ構造結晶化メカニズムについて解明することを目的としている。平成23年度は、本研究提案のケミカルドーピングを用いたナノエンジニアリング法(CD-NE法)を用いて、ナノサイズの人工ピニングセンター(APC)の密度の制御について研究した。具体的手法としては、基板表面修飾化法を用いてAPCの導入を検討した。LaAlO_3(100)単結晶基板上に有機金属塗布法(MOD法)によりBaZrO_3(BZO)用有機金属塗布溶液を用いて平均密度10個/μm^2、大きさ約100nm、高さ約3nmのナノアイランドの形成に成功した。このBZOナノアイランドを形成したLaAlO_3基板上に、GdBa_2CuO_3O_y(GdBCO)形成用有機金属塗布溶液を用いてGdBCO超伝導薄膜を形成した。その結果、ゼロ磁場中では、臨界電流密度1MA/cm^2以上を示し、かつ、印加磁場1T以上で磁場中臨界電流密度が向上した。したがってCD-NE法と基板表面装飾法を組み合わせることによりAPC導入が可能であることが明らかとなった。これらの結果は本手法を用いてAPCの大きさや密度を制御することにより、捕捉できる磁場強度を変化させることが出来ることを示しており、超伝導薄膜の使用目的にマッチした最適なAPC構造・分布の設計が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の目標であった本研究提案のケミカルドーピングによる超伝導薄膜のナノエンジニアリング法と基板表面装飾法とを組み合わせることによる超伝導薄膜特性の向上を達成できたため。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は、ケミカルドーピングによる超伝導薄膜のナノエンジニアリング法により作製したナノ人工ピニングセンター(APC)導入超伝導薄膜について、透過電子顕微鏡などを用いた薄膜微細組織観察により、これまで未知であったナノAPCが形成される過程について詳細に解析を行なう。また、この解析で得られた知見を基に、熱処理プロセスの最適化を行い、更なる超伝導薄膜の電流輸送特性の改善を目指す。
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