分子超薄膜内での広域的超伝導の実現に向けて、先ず、2C_<14>-Au(dmit)_2塩の水面膜と累積膜の構造評価を行い、Defect-freeな膜の作製条件を探索した。Brewster Angle Microscopy(BAM)法により水面上の膜(L膜)の形態を観察したところ、表面圧10-25mN/m、下層水温度17℃で比較的良好な膜が形成されることがわかった。また、原子間力顕微鏡法(AFM)による評価から、L膜の固体基板上への移行は通常の垂直浸漬法よりも水平付着法が適していることが明らかとなった。 フーリエ変換赤外分光法による解析から、膜に導電性を付与するための2次処理(電解酸化)によりアルキル鎖の秩序が向上することが明らかとなったが、この処理により、膜は多結晶質となり、大きさ数ミクロン程度の結晶性ドメインから構成されることがわかった。このことから、intrinsicな電気伝導特性を評価するためには、数ミクロン程度以下の電極ギャップを用いる必要があることがわかった。 そこで、高圧力下の電気抵抗測定に適した圧縮率の高い(柔軟性の高い)PETフィルムも含め、種々の基板上に数ミクロン程度の微小電極ギャップの形成を試みた。その結果、Langmuir-Blodgett(LB)膜の基板として用いるシリコンウェーハー、ガラス、石英、PETフィルム上にフォトリソグラフィー(リフトオフ法)を用いて5ミクロンの電極ギャップ(金、及び白金)を形成することに成功した。さらに、これらの5ミクロン幅の電極ギャップを有する基板上に2C_<14>-Au(dmit)_2塩の膜を移行し、電解酸化処理を行い、室温で70S/cmという高い電気伝導度を得た。
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