高効率な白色発光有機EL素子開発の一環として、低電流で高い電流効率やパワー効率が得られる素子の研究に取り組んだ。低電流稼動により、省エネルギーだけでなく素子寿命が長くなり安定性が得られるという利点が期待できる。青色発光層と黄色発光層を直接積層する従来の白色有機EL素子構造ではなく、これらの発光層の間に電荷発生層を挿入したタンデム型素子を清華大学の協力により作製した。青色発光材料としてカルバゾルビニレンービフェニル系蛍光低分子を用い、黄色発光材料としてイリジウム錯体燐光低分子を用いた。電荷発生層としてNPB/金属酸化物を用いた。最大電流効率68.1 cd/Aと最大パワー効率29.2 lm/Wを得た。これまでの蛍光―燐光ハイブリッド型の電荷生成層挿入タンデム型での最高効率とされるTyanらの45.3 cd/Aおよび 24.8 lm/Wより高い。しかも、輝度1000 cd/m2での電流効率は、68.0 cd/Aとパワー効率は24.6 lm/Wあり、実用化可能な効率である。上記の効率は3x3 mmの発光サイズの素子で得られたが、素子表面に光取り出し効率向上のための工夫がされていない素子からのものである。光取り出し効率向上のための特殊シート膜をITO電極面に貼付した場合と貼付しない場合とを、30x60 mmの発光サイズの素子で比較した。シート膜の光カップラーを取り付けることにより、70 cd/Aの電流効率が120 cd/Aに向上し、25 lm/Wのパワー効率が50 lm/Wに向上した。素子寿命は12000 時間であった。有機ELとしては世界的レベルで見て高い効率を得ることができた。さらに、電荷発生層における正孔と電子の生成は、2層からなる電荷発生層のなかで正孔輸送性をもつNPBのHOMO準位で行われていることを明らかにした。
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