有機金属塗布熱分解法(MOD法)は、製膜時に真空環境を必要としない。MOD法を用いて金属酸化物を製膜することで環境に優しい高品質・省エネルギー電子デバイスを作製することを提案している。低放電開始電圧(高2次電子放出薄膜)とするためには、エネルギーギャップ内に準位を形成する必要がある。準位の形成には不純物を注入する手法が一般的であるが、新準位を持つための不純物注入で低温結晶化ができることもわかってきた。新準位の機能を合わせ持った高機能性薄膜は、プラズマディスプレイパネルの放電開始電圧を低くすることが可能である。PDPの高輝度・高効率化を実現するため、放電混合ガス中のキセノンガス比(現行:10%)を、ネオンガスに対して上げると、放電の真空紫外光が増え輝度が上がることが一般的に知られている。しかし放電開始電圧が上がり、放電遅れが生じやすくなる。保護膜(2次電子放出材料)の物性/放電ガス種の状態と、放電・発光特性を関係づけるデータをより多く集積して、詳細な発光メカニズムの知見を得ることを最終の目的としている。 MOD法を用いて作製したMgO保護膜は1μm以下の薄い膜であり、精密に膜厚を制御することが可能である。平成22年度は、MgO薄膜に不純物を注入する前段階として、薄膜内の不純物をリセットする最適条件を確立した。不純物をリセットした状態を精密に確認するために、Kelvin Probe Force Microscopy (KPFM)で評価する手法を明らかにした。本手法を用いることで、MgO薄膜内に存在するH_2OやCO_2が300℃以上で除去されることを可視化した。 実験方法は、Thermal Programmed Disorption (TPD)で、H_2OやCO_2が除去される最適な条件を見出し、続いてMgO薄膜表面の半面にAuをコーティングした。Auを基準電極としてMgO薄膜の電位の詳細な動き(出力)をKPFM評価方法を用いて観察することに成功した。本手法はナノメートルレベルの面内分解能を持つことが確認された。
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