研究課題/領域番号 |
22560014
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研究機関 | 龍谷大学 |
研究代表者 |
山本 伸一 龍谷大学, 理工学部, 教授 (70399260)
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キーワード | 有機金属塗布熱分解法(MOD法) / 金属酸化物 / 高2次電子放出薄膜 / アークプラズマガン / APG: Arc Plasma Gun / Fe微粒子 / MgO薄膜 / 保護膜 |
研究概要 |
有機金属塗布熱分解法(MOD法)は、製膜時に真空環境を必要としない。MOD法を用いて金属酸化物を製膜することで、環境に優しい高品質・省エネルギー電子デバイスを作製することを提案する。低放電開始電圧(高2次電子放出薄膜)とするためにはエネルギーギャップ内に準位を形成する必要がある。準位の形成には不純物を注入する手法が一般的であるが、新準位を持つための不純物注入で、低温結晶化できることもわかってきた。新準位の機能を合わせ持った高機能性薄膜は、プラズマディスプレイパネルの放電開始電圧を低くすることが可能である。また、この金属酸化物は無機エレクトロルミネッセンスの蛍光層を挟む絶縁体層に用いることもできる。気相成長法の1つにアークプラズマガン(APG)がある。APGとは、アーク放電によりプラズマを発生させてイオン化された金属微粒子を基板上に堆積させて成膜する方法である。アーク放電は、高温度の陰極から熱電子から放出されることで維持される種類の放電であり、グロー放電に比べて陰極での電圧降下が少ない特徴がある。Fe微粒子を使用して薄膜にすることでより特性が向上する可能性を考え、気相成長法の1つのアークプラズマガン(APG)を用いてFe微粒子を基板上に堆積させた後に、MgO薄膜の作製を行った。APGは、アーク放電によりイオン化された金属微粒子を基板上に堆積させて成膜する。MgO/Fe微粒子薄膜を作製し評価を行った結果、MgO/Fe微粒子(50、100shot)薄膜においてMgOの結晶性がMgO薄膜と比べて向上することが確認できた。また、500shot以上になるとFe微粒子が薄膜を形成することから、MgOと反応しMgOの特性に影響を及ぼすことが分かった。Fe微粒子を微量堆積させた後に、MgOを成膜することで特性を向上させることが可能であることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
保護膜中にカーボンナノチューブ(CNT)を微量注入することで、単結晶成長することがわかってきた。CNTがMgO薄膜へ与える高結晶化度への影響を調べてきた。CNTは薄膜の耐エッチング強度を増すだけでなく、高アスペクト比を持つことから電界強度が高く、2次電子放出を上げる働きもある。
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今後の研究の推進方策 |
添加物の一種であるカーボンナノチューブ(CNT)、カーボンナノコイル(CNC)、MgOナノ粒子等を入れたMgO薄膜の利点は、より2次電子放出係数が高くなり、電子を空間内に効率よく放出可能であることである。よって環境・エネルギー変換ナノ構造マテリアル薄膜が作製可能となる。例えば、光電子放出された電子の放出が放電空間内の場合、プラズマディスプレイパネル(PDP)の駆動電圧を低電圧にすることが可能となることで、スパッタされない(削れない)保護膜を作製することが出来る。また、より高効率にすることで、省エネ効果や産業ニーズに応えることができる。これらの研究成果を早急に見極めることにより、次世代PDPに必要な研究技術を確立する。
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