研究課題
FeSr2YCu2O6+δは、超伝導を担うCuO2面と磁性を担うFeOδ面がc軸方向に積層された磁性超伝導体であり、量子コンピューターへの応用が期待できるπ接合(強磁性ジョセフソン接合、電流の位相がπだけずれるジョセフソン接合)が自然に形成されている可能性がある。本年度においては、この系の特徴ある超伝導特性について解析を行った。この系の超伝導は、還元アニール及びそれに続く酸化アニールにより初めて発現する。磁化測定によると様々なアニール条件において超伝導(Tcは約60 K)を発現するが、電気抵抗がゼロになる条件はきわめて限られる。Tcはアニール条件にあまり依存せず、ほぼ同じ結晶構造を持つBa2YCu3O6+δ系と比べると、印可磁場が超伝導に及ぼす影響がきわめて大きい。100 Oe程度の磁場を印可すると、Tc直下で電気抵抗が増大し始める。これは、粒内臨界電流密度に比べて、粒間臨界電流密度がきわめて小さなことが影響している。CuとFeとの相互置換が最も抑制された場合、粒内臨界電流密度は2 Kにおいて34万 A/cm2、粒間臨界電流密度は2 Kにおいて1.7 A/cm2である。中性子回折によると、CuとFeには若干の相互置換があり、CuO2超伝導面にはFeが、FeOδ磁性面にはCuが少量置換していて、特定のアニール条件においてCuとFeとの相互置換の量が最小になる。その値は、結晶全体の平均値で表すと、Cuサイトに対してFeが約10%、Feサイトに対してCuが約20%である。粒間にFeが凝集しやすいため、アニール条件の変化は粒間のCuとFeとの相互置換により大きな影響を与えることになる。FeOδ層自体が反強磁性的な磁気秩序を発現するため、ミクロには超伝導層/磁性層/超伝導層という接合が形成されているが、マクロでは粒間においても弱結合が形成されていることが明らかになった。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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