研究概要 |
本提案では室温での光学特性、伝導特性共に優れた性能を持つ有機半導体材料(チオフェン/フェニレン)コオリゴマーに共振器量子電磁気学(Cavity Quantum Electro-Dynamics,CQED)が適用できる領域まで微細加工を施し、少ないキャリア注入でレーザー発振が得られるような微小共振器と電流注入デバイス構造とを両立させる有機結晶薄膜作製技術と加工プロセスを開発することに主眼を置いている。TPCO系有機半導体の内、p型であるBPITとn型であるAC5-CF3と言う2つの材料でpn接合を形成し、電流注入での発光を得ているが、電流注入効率が非常に低い状況である。これを改善するために、p,n型材料それぞれにキャリアドーピングを行い、自由キャリア密度を増大させてデバイス特性を向上することを試みている。本年度はキャリア密度が確かに増大することを確認するため、EUV光を用いた光電子分光法(EUPS)により、フェルミ準位の変動を測定した。その際、光電子分光によるTPCO分子の内核電子構造が明らかになり、分子軌道計算とかなり良い一致を示し、そのHOMO準位が確かにパイ軌道から形成されることなどが分かった。また、p型ドーパントであるMoO3をBPITに、n型ドーパントであるCs203をAC5-CF3にいずれも2%ドーピングした時、フェルミ準位はそれぞれ4.0eVから4.3eVへ、4.8eVから3.9eVへシフトすることが実測された。それぞれp型、n型ドーピングとしては妥当なシフトであり、TPCO系有機半導体においてもp,n型制御が可能で、これによる有機ELデバイスの向上が期待できることが分かった。ドーピング試料を使った有機EL素子の特性向上を今後実証し、電流注入性の向上を図っていくことを今後推進していく予定である。
|