研究課題
難育成高温超伝導体であるLa_<2-x>Ba_xCuO_4に対して、独自に新開発したレーザ加熱結晶育成技術を適用した。従来技術では達成不可能であった育成方向に急峻な温度勾配を実現し、問題となっていた原料棒などにおける不要な反応を抑制し、大型結晶を安定的に育成することに成功した。粉末X線回折からは不純物相は認められなかった。ラウエ写真では、明瞭なスポット・回折パターンが観測され、結晶性は良い。ICPによる組成分析を行ったところ、原料棒に含まれるBa濃度よりも低いことが明らかになった。結晶表面にBa濃度の高い融液が付着することが原因と考えられ、原料棒中に過剰にBaを添加する必要がある。この系は、1/8異常を示す高温超伝導体の中で唯一磁性希土類元素を含まず、1/8異常の本質を解明する上で鍵となる物質であり、大型結晶による研究が待望されていた。本年度はほとんど報告例のないx=1/8を超えるBa濃度範囲にまで至る結晶育成を成功させた。x=1/8においてストライプ相が最も安定化されると考えられており、この組成を中心にして電子・ホール対称性が成り立つか研究するための基盤が整った。電子輸送現象の研究から以下の特徴が明らかになった。1.x<0.10(ストライプが存在しない領域)では電気抵抗の温度依存性に観測される磁場中の超伝導転移は扇状に広がるが、x>0.10(ストライプが存在する領域)では、平行にシフトする。2.x>0.10(ストライプが存在する領域)では、強磁場下の電気抵抗でlog(T)の発散が見られた。3.回折実験との対応は未確認であるが、構造転移・電荷秩序・磁気秩序に伴う電気抵抗の異常が存在するように見える。4.予備実験の段階であるが、x=1/8を境にしてホール係数と電気抵抗が急激に変化するように見える。更に系統的に実験を行って、早期に結論を導き、1/8異常の本質を解明する予定である。
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Journal of the Physical Society of Japan
巻: 79 ページ: 114718/1-114718/4
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